実は、読書会の一応のコンセプトとして、以下の基準により参加者またはわたしが選書しています。
- 別に海外文学に限ったわけではないが、他で読書会が催されている本についてはなるべく取り上げない
- 売れている本は別にわざわざ取り上げることもないだろう。あまり売れない本を応援する意味合いもある
- 参加しやすいようになるべく文庫・新書(とはいっても海外文学だと1000円オーバーは当然のご時世)
- 出版されて半年以内の本を選ぶことで売上に貢献する
- 上記に合わせて、入手しやすいこと
上記基準から、今回は同じ時期に同じ出版社から出た『ユニヴァーサル野球協会』を推す声もありましたが、おもしろさよりも変さで『第三の警官』に決まりました。参加者は男性3名、女性6名。初参加者は1名。最初は参加者による自己紹介(名前・普段どんな本を読んでいるか・課題図書の印象)から。なお、某zumi氏によるメモをわたしの解釈で記録しているため、参加者の発言意図から逸脱している可能性がありますのでご了承ください。
また、もちろんネタバレは気にせず記しております。
- 物語として筋がなく、詳細を読む小説
- とぼけたやりとりが奥行きのなさを助長しているが、それが売り
- 途中に出てくる発明のように入れ子構造になっている
- 奇想系。安部公房の『カンガルー・ノート』の地獄めぐり、ジャリ『超男性』の自転車愛好ぶりを想起
- 居心地の悪さ・閉塞感が全体を覆っている
- 一見思いつきのようだが、再読すると整合性を感じた
- 「未来世紀ブラジル」などを想起
- カフカ『審判』『城』のようなとりとめなさがあるが、伏線の回収がしっかりしている
- 途中の謎理論ほかで眠くなる
- 「不思議の国のアリス」、山岸凉子を彷彿とさせる
- 『ドーキー古文書』と共通の世界観なので、合わせて読むと吉
- 『ガリヴァー旅行記』から続くアイルランドのイングランド批判精神と自虐的なユーモアの混在
話の始まりは自転車小説は他にあるか、というところで、SF的には『くらやみのスキャナー』の黒人さんが真っ先に浮かぶ。「おまえさんは10段変速って言うけど、前に2段、後ろに5段ってことは……7段じゃねえか」と切れる名場面。それに匹敵するのは自転車と暗闇で恋に落ちる本書唯一のラブシーンでありましょう。フラン・オブライエンの場合、本作に限らず語り手ならびに登場人物が思い込みを既成事実化してしまい、それがどんどん膨れ上がっていくというのが特徴かも。
世界構造が映画インセプションぽい、注釈わけわからん、などなどいろいろお話しました。後半では某氏の必殺レジュメが活躍。前もって調べてくれるのはいつも助かります。一つ心残りだったのは、ラストで語り手が復讐のために化けて出てくることを語り忘れたこと。日本の幽霊に似ているとか、いろいろ人によって感想が異なりそう。
コメント