国枝史郎「善悪両面鼠小僧」

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21世紀になっていいことはいっぱいあるが、中でも国枝史郎が無料で読めるなんてのはベスト10に入る。
ちょっと前までは文庫といえどもなかなかの古書価であった。
特に横尾忠則の毒々しい色彩の表紙である講談社の伝奇文庫シリーズはよかった。
白い背に太い明朝体で「国枝史郎伝奇文庫」と書かれているだけで、おっ!と歓喜したものです。
オンラインで読めるといっても表紙の美麗さから集めたいシリーズ。

無料になったからといって読まないのは悪いことだ。短いものからちまちま読むべ、と「善悪両面鼠小僧」をiPadで開く。
だいたい出だしはそんなにどの作品も変わらない。
アクション&講談調なのだ。
そして文政末年だというのに「クレオパトラだって適うめえ。」と横文字登場。文政末年は1830年である。おもしろい。
鶯谷に場面を移すと、「――こいつヒステリーに相違ない。」とまたも横文字。文政末年は1830年である。すばらしい。

オチは有名なアレですがそんなことぁどうだっていい。
勢いと悪趣味が同居した、横尾忠則や丸尾末広のような世界。
正直、国枝史郎とダンセイニがあれば本なんて買わなくていいんじゃないの、と言ってしまいたい。
なんてことは、またおもしろい本に出会ったらすぐに撤回するのだが。
国枝史郎未読の方はぜひとも『神州纐纈城』からお読みいただきたい。
未完だなんてことはどうでもいい。
まず題名がかっこいい。神州。纐纈。城。
国枝史郎お得意の血染めがふんだんに使われております。

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