ワインより日本酒の方が種類が多くて難しい

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冬にビールというのはあまり飲めない。これはロシア人が紅茶をたくさん飲めないのと同じ理屈であります(『亡命ロシア料理』参照)。

従って米やぶどうで作ったお酒に手を出すことになる。ぶどうで作った酒を10年くらい主軸として呑んできたのだが、端的に言うと高い。あれはブルジョワの飲むものだ、と最近になってようやく気がついた次第。つまり日本人なら米でできた日本酒を飲むがよろしかろう。日本酒はワインと比べるとすごく安い。ちゃんとした純米酒の一升瓶というのがだいたい2000〜3000円のところ、ワインは720mlでそのくらいのお値段が当然だ。しかもアルコール度数が1.25倍くらいちがう。手軽に酔いたいならまちがいなく日本酒だ。

まして季節は冬。冬といえば鍋。鍋といえば日本酒という黄金率は変えられない。ということで、時間があることをいいことに、いざ日本酒を物色せん! と意気込んだのだが、日本酒はとにかく種類が多すぎてよく分からない。

ぶどう酒だったらぶどうの種類と作り手、生産国さえわかればとりあえず味の憶測がつく。同じピノ・ノワールでも、フランスのブルゴーニュでピノ・ノワールだったらそれなりの値段だろうし、繊細で和食にも洋食にも合うけれども、深窓の令嬢のように下手をするとつんつんすましただけで懐に入らせてもらえないようなリスクも有る。オーストラリアでのピノは水泳選手のように肩幅のガッチリした、でも悪いやつじゃない飲みごたえがあって鳥とか牛とか「肉持ってこい」な味が予想される。チリで1000円くらいのピノ・ノワールだったら、繊細なはずだけどゲットー育ちで、どこがピノ・ノワール?というブルゴーニュ産とは月とスッポンの違いがある。3つくらいの要素がわかれば概ねの味の憶測がつくのだ。

ところが日本酒は地方の差がよく分からない。なんとなく田舎で作ったほうがうまいのかなと思うが、地域差や米の品種がワインほど明確でない。それでいて「日本酒度」やら「甘辛度」なるものがあるそうで、各瓶に明記されていればともかく、それがないものも多い。詳しく聞いてみてもよく分からず、結局酒屋や飲み屋の言いなりで呑んで、まずまずうまい。それがかえって自分で選んだと思えないまま「まあ、うまいな」と腑に落ちない納得感を増加させてしまい、「あの時呑んだ酒うまかったけど、なんて銘柄だったかな」なんて適当な飲み方になってしまう。

これではいかん、と近所の日本酒と焼酎がどっさり置かれている、おやじがいかにも日本酒通という酒屋で聞いてみた。条件は「手持ちが2500円」「辛口・すっきり系が好き」の2点で勧められたのが、山形県の大山特別純米酒。なのだが、いざ公式ページを見ても、わたしが買った黒いラベルは掲載されていない。その代わり、

  • 特別純米超辛口 愛心酒
  • 特別純米原酒 原蔵
  • 清酒大山 特別純米生酒
  • 清酒大山 特別純米酒 十水
  • 清酒大山 特別純米にごり酒
  • 特別純米酒 杉の香慕情

と、特別純米酒だけでも6種類もある。それぞれ特徴が書かれているけど、自分が求めている味がどれなのかさっぱり分からない。

つまり、ある程度うまい日本酒ならどれでもいいという、雑な舌なわけで、これからも適当に安くておいしそうなのに手を出していくことにします。なお、大山の特別純米酒はその後に買った通常の純米酒よりも澄んでいて、すっきりさっぱり、料理に合わせて実に馴染みの良い味でございました。

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