コケカツ(123)冬虫夏草祭り

Bryophytes
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コロナウィルスのせいで今年は一度もコケカツしてなかった。やろうぜって約束した時は感染者数が減少していたけど、いざ開催する日になって過去最高の感染者数になる始末。
しかも、去年は雪と水不足が原因で行けなかった場所は、今回長梅雨のせいで大雨の予報。祟られている。
しかし、現地についてみると曇って湿度は高いものの、雨はあがっていた。昨日映画館で見たナウシカの婆様による「奇蹟じゃ、奇蹟が起きたのじゃ」の声が脳内で感極まる。

奥多摩湖

コケのきれいな季節として梅雨があげられることがあるけれど、きちんと細部を観察するには向いてない。水を吸ってしまうと乾燥している状態と比較できないから。
でも、今回は梅雨のコケ、いいなと思った。
半年ぶりでコケ目がなまっていて観察どころではないのかもしれない。でも、コケを見に行くことができない状態を半強制された後で、思う存分見ることができるという状態がただただ嬉しかった。
正直、わたしは周囲のコケ友に比べるとコケ愛が薄い。育てる気もないし、何があってもコケを優先するというほどでもない。
それでも湖と鬱蒼と茂る木々、それを地面から支えるコケを見ていると、自然の中でいろいろなことを忘れてコケや生き物に没頭できる状況が好きなんだと思える。

コツボゴケと地衣類のツメゴケ

コツボゴケと地衣類のツメゴケ

潤った初夏の林床にはキノコがたくさん。
キノコ図鑑として定評のある『増補改訂新版 日本のきのこ』を電子書籍で持ち歩いているけど、見つけたキノコが何類で、どのあたりのページに載っているかも分からない。
コケの図鑑だとだいたいの場所が分かるので、単なる勉強不足。
大島弓子先生の「毎日が夏休み」は登校拒否の少女が、無職になってしまった父と一緒に仕事を興すことで、いわゆる「やりがい」を見つける話ですが、ラストで

ああ
わたし
いっぱい
仕事したい!!

と木漏れ日を見上げた視界で独白する、その爽快さと同じくらい「わたしももっと世界を知りたい」と思ったことです。
そのためにはもっと図鑑買わないと。

今回は冬虫夏草に詳しい人がいて、折しも夏の間が基本的に冬虫夏草のシーズンだそうで、カメムシタケにわんさか出会うことができました。
去年もAKM48でたくさん出会って、あれも初夏だった。今回はカメムシタケ以外の冬虫夏草も教わって、コケ以外の楽しみがまた一つ増えてしまったので、さっそく図鑑を発注した。

苔類パラダイス

苔類パラダイス

ヒメクラマゴケモドキ?

ヒメクラマゴケモドキ?

彼曰く「宝探しみたいで楽しいですよね」
あ、宝探しが楽しくていいんだと、最近の悩みがすっと消えていくようだった。自分のコケ観察は宝探しの遊びみたいなもので、学術的な裏付けとか育成の技術がさっぱりない。なくても、図鑑をひっくり返してなんとなくこの種かもと考えることが楽しい気がする。でもそれって別にコケじゃなくてもいいんじゃない? まじめにコケに取り組んでる人に失礼だし、わたしの宝探しは「どうぶつの森」で解消できるよなーと最近考えてたことが、消えてしまった。
みんなで歩いてコケを見る、キノコを見る、冬虫夏草を探す、基物(土とか木とか生えてる元)や斜面の向きによって生えてるものがちがう。自然はこうなっているというのをただ見ることができれば、それでいいみたい。学術的な裏付けがなくても、自分なりに発見があって、自分と一緒に歩いてる人が楽しいのが大切なんだ。

花被をつけはじめたフルノコゴケ

花被をつけはじめたフルノコゴケ

そう、単純に楽しかった。人と一緒に声を出して笑ったのはいつ以来だろう?
近くにいる人と同じものを見て、でも知識は全然ちがって、それでも発見の喜びは同じ。脳内の地図にコケやキノコや冬虫夏草のある場所がぐりぐりと書き込まれていく。世界が拡張していく。脳内のハードディスクはこういうところに使いたい。
大雨の予報が外れて、観察中はほとんど雨が降らず、昼食をとりはじめたから土砂降り。天もわたしたちの観察時間まで待っててくれたみたいな、ふしぎな1日でした。

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