コケカツ(122)『アルテミオ・クルスの死』

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最初に読んだのは10年くらい前か、一人称・二人称・三人称を駆使して小説を書くことができるということにまず驚いた。それも単に雰囲気で使っているわけじゃなく、人称によって視点が変わる。その技術と実験的な精神に感服したことを覚えています。
8月にオンライン読書会をやるのでレジュメというかまとめ。

人称の違い

一人称:現在。病院に腸の病気で入院しているアルテミオ・クルス自身の言葉。おそらくは発話していない。普段の自分の性格。
二人称:未来形が多用される。アルテミオ・クルスの表には出ないもう一人の自分。内省的。
三人称:過去の事象。アルテミオ・クルス自身も登場人物として描かれる。

時間

ラストではアルテミオ・クルスの幼少期が描かれるが、おおむね中尉としてメキシコ戦争を戦って生き延び、地方の名士に婿入りして新聞社を経営、政治家(?)として国の有力者となった一代記。
三人称の時は見出しとして日時が記される(本来の表記は漢数字だけど読みづらいので直しました)。

p.23 1941年7月6日

アルテミオ・クルスの妻と娘が運転手付の車でショッピング
アルテミオ・クルス(52)とアメリカ人の鉱業に関する交渉→クルスは1889年生まれ

p.52 1919年5月20日(クルス29歳)

アルテミオ・クルスは牢で一緒になったゴンサール・ベルナルの家で父ドン・ガマリエルと、ベルナルの妹カタリーナに出会う
アルテミオ・クルスはカタリーナの恋人を脅して村から追い出す

p.94 1913年12月4日(クルス24歳)

1910〜1917年のメキシコ革命
アルテミオ・クルス中尉とレヒーナの恋
クルスは戦闘で味方を失い、革命軍によってレヒーナを殺されて泣く

p.137 1924年6月3日(クルス35歳)

クルスとカタリーナが結婚して5年たつが、心は結ばれていない
カタリーナの独白
ドン・ピサーロの土地をめぐって対立しているが、事実上クルスが地域を支配している

p.191 1927年11月23日(クルス38歳)

クルスは国会議員になっている
警察署長を含めてのロシアンルーレット
聖職者が処刑されることを受けて、カタリーナは司祭を匿うが、翌日には連行されている→クリステロ戦争
ここでの大統領はカリェス

p.227 1941年9月11日(クルス52歳)

バツイチのリリアを連れてクルーザーに乗り込むが、同乗するハビエルにリリアを取られる

p.261 1915年10月22日(クルス26歳)

クルス大尉はビリャ派の抵抗にあって捕縛される
ビリャ派とオブレゴン将軍の戦でクルスは逃げ出すことに成功、廃坑に逃げ込む
しかし廃坑から抜け出るとビリャ派の宴会のど真ん中だった。再び捕まる
サガル大佐との取引をクルスは断り処刑を待つ
牢屋でゴンサール・ベルナルと出会う
再びサガル大佐とクルスは取引。その最中にクルスの味方が攻め込み、クルスはサガル大佐を銃で脅す
クルスとサガル大佐の決闘、クルスは自由になる

1934年8月12日(クルス45歳)

クルスはラウラ(35)とパリで不倫

p.355 1939年2月3日(クルス49歳)

クルスの息子ロレンソがスペイン戦争に従事、共和派につく
仲間のミゲル、途中で会ったローラたちと共に抵抗(「国境を越えたら」の死亡フラグ)

p.391 1955年12月31日(クルス56歳)

リリアとはまだつきあっていて、年越しダンスパーティーの前にもめる
若いセバーリョスとの対話:権力

p.439 1903年1月18日(クルス13歳)

混血のルネーロとクルスは小作人として働いていた
ルネーロは主人が死んだ後クルスの面倒を見ていたが、別の農園に行くことになる
ルネーロと別れたくないクルスはショットガンで人買いと思われる男を殺すが、それはペドリート(地主の息子)だった
クルスはアタナシオ(ペドリートの父)の私生児

p.489 1889年4月9日

クルスが生まれる時にはルネーロが取り上げた

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