岩波ホールでかかっていた時から気になっていた「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を見てきました。これは「知」について少しでも考えることがある人はぜひ見た方がいい。こんなこと図書館でやっていいんだ!?と驚きの連続です。
コロナウイルスの自粛期間が解けて街に人が戻ってきた。暑さからマスクをしていない人もちらほら見かけるけど、距離を多少とりつつこれまでと同じように過ごしていきたいという空気を感じる。
自粛が解けて真っ先に行かねばと思っていたのが映画館。助成金があったのか分からないけど2ヵ月近く休業していたし、再開したとは言っても距離をとらないといけないから半分しか客を入れられない。継続性も心配だ。だから自分に余裕があるうちは毎週通おうと決めた。県をまたぐ移動はまだやるべきではないし、家の内部を充実させたせいで国からの補助金は使い果たしてしまったし。
休憩を挟んで4時間近くあるというので、岩波ホールの固い椅子では耐えることができないと半ば諦めていたのが、他の映画館でもかかるようになったのはうれしい。
基本はN.Y.にある複数の図書館の様子と、図書館内のスタッフによる打ち合わせや会議、そして図書館のさまざまな利用方法。
日本だと本をはじめとするメディアの貸し出しばかりが注目されがちだし、ニューヨーク公共図書館もそうなんだけど、他にもさまざまな取り組みがなされていること。
一番驚いたのは、ニューヨークにネットワークにつながれない人が3割くらいいることが分かって、それを解消しようとWi-fi端末とタブレットを数ヶ月単位で貸し出すこと。それって図書館がやることなんだ? 「他人に貸したらギガが減るから覚悟しろ」とか事前説明会もあり、自力でインターネットに接続できない人たちをなくすことで、情報弱者を減らすことが目的。
わたしだったら「貸し出してもゲームに使うのでは?」と疑心暗鬼になってネットワークまで負担しようとは思わないけど、そうじゃないんだ。可能性を信じてるんだと気づかされました。知識によって人生が変わるかもしれないという可能性。すごい。
もう一つ、ブロンクスなどは黒人の貧困層が多く利用している。そこでは街の人々と図書館員がオープンな話し合いの場をつくる。
「白人には3ドルで卸すものを黒人には5ドルで卸している」
「だから黒人は仕方なく値上げするしかない」
「でも近所の人は高いものを買えないから、白人の店で買う」
「白人は儲かるし、黒人は貧しいままだ」
一時期、大学入試で黒人が優遇されているなんて話がありましたが、実際にそういうのは一部、それも優遇ではなく当然の権利であって、まだまだ差別は根強く残っていると最近のニュースを思い出しました。
これだけ多くの人が知識にアクセスできても、差別はなくならない。ちょっと悲しくなります。
一方で、最近何かをきちんと調べよう、学ぼうという気持ちが薄れていた自分を奮起させる良い機会にもなりました。
このままだらだらプルーストを読んで、ちょっと気になった本を読むくらいしかやることないな、と思い込んでいたのです。世間のダウナーな雰囲気に飲み込まれていたのでしょう。
でも、わたしはまだ何も分かっていない。コケのことも全然知らないし、ハンナ・アーレントのちくま学術文庫を一通り読んだけどさっぱり分からないし、ゼーバルトも読み終えてない。
もっとわたしは図書館を使ってやってみたいことを形にしていかないといけないと、わくわくしながら劇場を出ました。
この本も読んでみたい!
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