コケカツ(113)

book

去年の本屋大賞受賞作を読んで、前半ものすごく好きなのに、後半一気に楽しくなくなった。なんでだろう?

前半は親が事情によって家から出たり入ったりして、主人公の子どもが軸になっている。家庭のあり方が一様ではないというところがすごく良くて、特に3人目の父親との会話・家庭のあり方は理想的ですらあった。母親が出て行ってしまい、40前の父親と高校生の主人公が料理やお菓子について互いの相違を認めながら、家族としてやっていこうという二人の意思が合致していた。型にはまらない家庭のあり方を描いていくのかと思っていた(親がなぜ出入りしているのか徐々に明かされていく過程もとても良かった)。

しかし後半、主人公が恋人を見つけたあたりから、いや、その前のピアノのところから失速したように見える。中学の3年でピアノがめきめき上達し、それがきっかけで恋人になる人を意識していくところが後出しに見えてしまう。ピアノやってたなんて、前半には出てこなかったので唐突でもある。それに上達の速度もフィクションならではの試行錯誤や迷いがなくて、するするとうまくなってしまう。そうだったらいいけど、そんな簡単にいくかな?
中学の時にふらりと始めたパーカッションは散々な上に同期とあまりうまくいかなかったので、若いからといってするすると演奏がうまくなっている姿を描かれると、不信感のスイッチが自動で入るみたい。

もう一つ悲しいなあと思ったのは、「正しい家庭を築こうとする」ところが是となっているところ。親がたくさん変わっても、結局は「正しい家庭」を目指してしまうのか。恋愛をして二人だけの家庭を築き、そこに育ての親はいなくても、結婚式があれば是となるというのが前半で描いてきた姿と別人に見えてしまう。
「正しい家庭」を指向する人たちに向けて書かれているのであって、途中までのシングルファーザーと娘の関係を好ましく思っていたわたしが実は本の対象に入っていない存在なのだった。前半が良かっただけに後半の「あるべき家庭のあり方」に収めようとする姿勢、改めて見るとタイトルも、前半の親子関係を否定するように見えてきて悲しくなった。

日本の小説はとてもよくできていて引っかかりなく2時間くらいで読めてしまう。海外の小説は同じページ数でも1週間くらいかかるのに、どうしてこんなに速度も印象もちがうんだろう。

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