コケカツ(93)全然普通じゃない『増補 普通の人びと ──ホロコーストと第101警察予備大隊』(1)

増補 普通の人びと ──ホロコーストと第101警察予備大隊 book
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コロナウイルスで滅入っている時に読むべき本ではない。それでも手に取ったのは、死が身近にある状況とはどんなものなのかを考えてみたかった、歴史上どんな状況なのかを知りたかったから。

『増補 普通の人びと ──ホロコーストと第101警察予備大隊』を出版社の紹介からひくと、

ポーランドにおいて3万8000人ものユダヤ人を殺害し、4万5000人以上の強制移送を実行した。私たちと同じごく平凡な人びとが、無抵抗なユダヤ人を並び立たせ、ひたすら銃殺しつづける―そんなことがなぜ可能だったのか。

38,000人。ちょっとした市レベルの人数です。人数で人の死を考えてはいけない、ひとりひとりに人生があったのだからまとめた数値として考えるのはまちがっているというのはよく分かります。しかし、人には想像の限界があり、限界を広げるためには数字から考えるしかありません。

第101警察予備大隊は「予備」とあるように、ナチスドイツの前線で戦う兵士ではなく、侵略した地域の統治を目的とした警察の役目を担います。隊の多くは中年男性。
ナチスドイツは1941年に「バルバロッサ作戦」によってポーランドに侵略しました。電撃的に進軍された後に残されたポーランド人を待っていたのは、ドイツ警察による自発的な略奪「ポグロム」でした。この時点ではユダヤ人をかり集め虐待の末に殺害することはあったものの、後に見られるような効率を求める大量殺戮ではなかったようです。

シナゴーグへ駆り集め、思いのままに、鞭打ったり、恥辱を与えたり、あご髭に火をつけたり、射殺したりした。

それは中央からの指令により明確な抹殺へと転換していきます。p.47に記されている射殺されたユダヤ人の数字は、ただの記録にもかかわらず目を疑うしかなく、戦闘が行われていないのに2日で15,000人を射殺とあるのは何かのまちがいではないかと今でも信じられません。
Wikipediaによるとソ連との開戦後にジプシーやスラブ人を含めて9ヵ月で100万人が殺害されたとあります。世田谷区の人口が約93万人。

アニメのゴブリンスレイヤーを見ているところなのですが、主人公はただひたすらにゴブリンだけと戦い確実に殺していく話です。そこに栄華はなく、地味だけれども確実に人間に害を為す者を殺していく。主人公は殺すに至るための個人的な動機がある。

ナチスドイツの警察はどうだったのか。将軍の一人は部下の狼藉に顔を背けたという描写もありますが、隊員の多くはユダヤ人虐殺に高揚感を覚え、国家に貢献しているという誇りをもっていたようです。ゴブリンスレイヤーは復讐心と経済活動を理由にゴブリン討伐を行いますが、ナチスドイツとどれだけちがうのか、わたしには説明する言葉がなく、動機はかなり近いように思えます。
罪に対する罰はどこまでが許されるのか、答えのない問いを考え続け、赦しと戒めを実践していくしかないのかもしれません。

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