コケカツ(90)今度こそネタバレありで劇場版SHIROBAKO

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劇場版SHIROBAKO2回目を見てきました。初回は音響設備は最高だけど7.1chの映画館ではなかったので、どうちがうのか気になって。
全体的に響く音で、ところによっては座席が震えるくらい。特にラスト前の宮森さんが周囲から聞きたくない言葉が聞こえてくるところは7.1chならでは。

同じ映画を2回見るというのはよほどのことですが、SHIROBAKOの場合は登場人物がとても多いので1回見るだけでは処理しきれない。なので、2回目の方が基本の流れが分かっている分安心して泣いてしまいます。
1回目はいろいろな効果や、テレビ版とちがうところばかり目が行ってしまって、肝心の物語を素直に吸収できなかった。
2回目といってもいろいろな仕掛けがあったはずですが、細かいことそっちのけで宮森さんたちと武蔵野アニメーションならびに協力会社の話に吸い寄せられました。

なんでこんなにSHIROBAKO好きなんだろうと自分でも不思議なのですが、一言で言うと適材適所が美しいからだと思います。ねとらぼでは「アベンジャーズ/エンドゲーム」に比肩されていますね。
三国志で関羽が曹操に仲間になれと誘われますが断って劉備の許に戻るように、宮森さんたちと武蔵野アニメーションはみんな一緒じゃないとダメなんだと。
もう既に仲間ではないケーキ屋の本田さんは、劇場版ではすごいとんちんかんなことばかり言ってます。それは宮森さんたちと武蔵野アニメーションの仲間ではないからだと思うのです。
劇場版後半で武蔵野アニメーションは再びアニメを短期間で作ることになりますが、どんなに人手が足りなくても宮森さんが本田さんに声をかけることはありませんでした。
もう既にケーキ屋さんとして順風満帆な本田さんをアニメ制作の現場に戻せることはないと、宮森さんもボスの渡辺さんも分かっています。
突然会話に混じってきても話が通じないのは、もうアニメ業界にはいない堅気の人という位置づけなのでしょう。

声が素敵だなと思うのは作画監督役の安原さんなのですが、キャラクターとして応援したいのは声優役の坂木しずか。
高校時代を描いたコミックスでは一番アニメ業界への意欲が強くて、みんなを諫めたり導いたりした彼女は、業界に入ると一番後れを取ってしまいます。ほかのみんなが現場で活躍したり現場に入ることができたのに、彼女だけ声優の卵どまり。それでも腐らずに遊園地のキャラクターボイスを演じたりしているうちにチャンスを掴む。23話は伝説です。
今回の坂木さんは一応バイトをやめて働けるようになりました。しかしそれは自分の望んだ仕事とはちょっとちがう。本当に目指していた声優のために彼女は本作でも悩んでそれまでの自分を脱却します。
テレビ版ではCG制作のみーちゃんこと藤堂美沙さんが自分の望んだ仕事と現状のちがいに悩むところと似てるなと思いました。ただ、声優はもっと不安定な仕事。宮森さんはまた泣きそうになってましたが、わたしもつられて泣いてました。

小笠原綸子様(ゴスロリ様)をはじめ、制作陣ひとりひとりに個性があり物語があるのだけど、テレビ版を何度も見ているとやはり5人に成功してほしい、5人で一緒に作ろうと誓い合った「神仏混淆七福神」を作り上げてほしいと思います。
一方でこれだけアニメ制作のリアリティ溢れた現場では、そんな時間も予算もないことは常々現実として突きつけられる。それでも5人で一緒にアニメを作るという場面、今回はベテランの杉江さんが持ってきた案件によって達成しました。5人がそれぞれ分担して子どもたちを操ってアニメを作っていき、最後は自分たちもアニメの中に入って動く。メタが過ぎるという意見もありそうですが、現場でアニメを作る人が未来に種を蒔いたという意味で欠かせない場面でした。

ラストの納得できるかできないかを議論するところは、テレビ版の熱さが再現されていてとても好きなシーンです。会社では会議はあっても議論はない、誰かが主張してることを唯々諾々と従って作業をするだけ、という仕事のやり方をわたしはずっと続けてきました。えらい人への下剋上ではなく、みんなが思っている納得できない空気をきちんと声に出して言える、行動できる。そうやって人を巻き込んでいくから宮森さんは魅力的なのだと思います。
誰かが楽しそうにしていると、自分も楽しくなれるかもしれないと巻き込まれる性質が人にはあるのかもしれません。本が全然売れないと言われながらも、二子玉川で開催された本屋博は多くの人で賑わいました。書店という区切られた場所ではなく、駅構内という誰でも立ち寄れる場所で、楽しそうに本を作って売っている人たちがいることによって、通行人が「楽しそうだ」と思ったから盛況になったのではないか。
宮森さんの務める制作・プロデューサーにはいろいろな業務がありますが、最終的には人を巻き込む仕事なのかも。

群像劇のアニメというと、個人的には「響け!ユーフォニアム」が最も心に残っているのですが、あちらには吹奏楽部に在籍するだけでは安心できなくて、オーディションで勝ち残ったりコンクールで金賞・さらに上の大会を目指さないといけない。
「SHIROBAKO」の場合はまず仕事があるという安心感があって、さらに良いものを作ろうという自分や同僚との成長が描かれる。作品を完パケしたところがゴールで、その更に上というのは次の作品にあたる。作品の評価は木下監督が「Webは見ない」と嫌っていたように、作中では斟酌されない。過去の失敗作は言及されるけれども、「ユーフォ」のように敗北の悲壮感とはちょっとちがう。
同じ群像劇でどちらも大好きな作品、結果が全てなのも一緒なのに受ける印象はすごくちがう。
ちょっと根拠はありませんが、こういう群像劇ってアニメじゃないとうまい効果が出ないかもしれないと思いました。

さっきまでを見ていました。まだネタバレ解禁できない時期だから作品の詳細はありませんでしたが、数ヶ月後、コロナウイルスが収束した頃に再び関わった人たちの話が聞きたい。読書会をやっている者としては、良い作品はディティールを語ってこそよりよくなると言いたい。
この放送で木村さんが「宮森さんがおもしろい顔をしなくなった」という言葉にハッとしました。確かにそうだ、それが成長のすべてとは言えないけど、4年前の宮森さんとはちがうことを改めて気づかされました。

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