『これからの本屋』を読むと、何でも揃う大型書店と店主の志が表れた小規模な書店の2種類に分かれていくように見える。京都や徳島など東京以外の書店が特に1人ないしは2人で取り回す規模が多く取り上げられている。荻窪のtitleなんかもそうだけど、広すぎないけど地元のニーズも拾いつつ、マニアックな人も引き寄せるような棚が目指されている。
書店は難しいよなー。発売されたばかりの新刊を追いかけるのはほんの一握りだろうし、ユーザーのニーズすべてをすくい上げるなんてことはできない。売れるはずの『鬼滅の刃』はあっさり売り切れちゃうし、1冊だけいれた海外文学がいつまでも残って返本できないこともあるだろう。取次が数をコントロールしていると売りたい本が売れないままタイミングを逃したりする。あらゆる本を揃えるだけの体力がなければ、客を見定めて小規模に回していく方がリスクが少ないのだろう。
本を介して人と会う、話すというところにこれからの書店の鍵があるように思うのは、読書会の熱気を知っている偏った考えかもしれない。大型書店では利用者はただ欲しい本を探して、金を払って帰る。時には探している本を書店員に聞いて探してもらうけど、その本の内容について話すことはまずない。本を読んでただ自分のうちで熟成するのを待つのももちろんありなんだけど、他人と話すという機会を増やすことが読書量の増加につながるのではと思っている。こういうこと研究する人いないのかな? 子どもと親の関係性の調査はよくあるけど、成人だけで調査したのは見つけられなかった。子どもの読書はもちろん大切なんだけど、大人になってからの読書の方が何倍もためになるし、おもしろい。
最近見かけた記事で、タイトルは「13坪の「小さな総合書店」が18年間生き残った理由-福岡「ブックスキューブリック」」とあるけど、店舗を購入したから続けられているわけで、文中でも語られているように、
「年々社会環境は悪化してます。この20年で最低賃金も消費税も上がったのに、本の売れ行きは下がる一方。正直、かなり厳しいですよ」
家賃を払わなくていい書店でさえ厳しいのだから、家賃を払い続けながら本を売ることで利益を作るのはとても大変だろう。
個人的には書店の未来ってあまり明るいようには思えなくて、商品の性質上、試すことができないのが大きなデメリットだと思う。酒や食物は試飲・試食があるし、音楽だって1分聞けばある程度好みじゃないか判別がつく。でも、本は1分読んで良いかどうか分かる人は僅かではないか。他者からの評判や自分の勘を信じて購入するのがほとんどだろう。時間を消費するけれども見返りは大きいということをどう一瞬で分かってもらえるようにするか。見返りを期待するなんて浅ましいと思うかもしれないけど、占いの本が発行部数9300万部や、3年連続で100万部超を発行している「ゲッターズ飯田の五星三心占い」シリーズなんてのを聞くと、利益を求めて行動する人々を蔑ろにはできないんじゃないか。
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