コケカツ(52)ジルベルトに会わないと決めたが偶然会うかもしれない

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『失われた時を求めて』まだ読んでいる。第二編「花咲く乙女たちのかげにⅠ」も中盤から後半。「私」がジルベルトに夢中になったけど、そのうちよく分からない理由で愛想を尽かされ、「私」もうまくいってないことが分かるとしょんぼりしてくる。

「あなたのこと、ほんとうに好きだったのよ、わたし。いつの日かあなたにもわかるでしょうけど」(光文社古典新訳文庫版 p.379)

この言葉をきっかけにジルベルトに会うことをやめようと決意するも、逡巡しまくるところが青春。ジルベルトのことを頭から閉め出そうと思っても彼女のことばかり考えてしまい、ジルベルトの母ことスワン夫人にはしょっちゅう会いに行ってたりと、未練たらたらなのです。ここが青春だなーとふわふわした気持ちになるので好き。スワンも同じようなことをスワン夫人ことオデットにしてたよねと懐かしい気持ちにさえなる。
建前はジルベルトに会わないことにしているのに、本音では偶然出会って「もう一度やり直して」と言われるのを待っている。ジルベルトが手紙で謝ってくるなら許さないこともないけど、すぐには会いに行かないもんね。かつて橋本治が「恋は愛した方が負け」と言っていたそのままではありませんか。

当然ジルベルトは謝罪どころか手紙も書かない。「私」は年賀状が来ないよと泣く。実際のジルベルトは自分のことなんて考えていないのは理解しているものの、気持ちはまだジルベルトにあって、誰かに褒められた時に「ジルベルトがいたらなあ」と嘆息する。やがて本当にジルベルトとの音信が途絶え、静かに悲しみに暮れる。ただのロマンス小説ではないのは内面を徹底的に描写しつつ、「私」を取り巻く世界も明瞭なせい。『失われた時を求めて』はいつも読んでいる最新のところが一番好きになる。スワンを読んでいる時はスワンやなやつだけど肩入れしてやるかと思うし、3巻では「私」はうじうじしててしょうがないやつだけど応援することになる。先は長いけど、ここまで来るとやめられないのも事実。大河ドラマを毎日見ている人も同じような気持ちなのでしょうか。

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