コケカツ(20)

ミカヅキゼニゴケ(Lunularia cruciata) Bryophytes

コケカツ!とは野山に分け入ってコケを見ること。撮るだけで採らない。

ゆうべは読書関係の知人たちと忘年会。おでんのおいしい某所は家から1時間以上あるのに、結局今年は3回も足を運んでしまった。自分が行きたい飲み屋の条件は、「大きすぎない箱」「出汁のうまい料理」「適度に迷える酒」「店員に好感が持てる」「べらぼうに高くはない」というところで、その全てで満点。

参加者の一人が日本以外の国へ転居することになり、あいつが勧めてた本を持ってたな、と思い出してティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』を読み始める。たくさんの荷物を背負っている兵士たちの所持品ひとつひとつの重量を執拗に記す「兵士たちの荷物」からぐっと気持ちをつかまれた。こういう小説ちょっと読んだことないかも。そして村上春樹訳というのもよく分かる。感情的な言葉もなんだかドライ。離れて暮らす彼女の記憶をわずかな物で埋め合わせようとする気持ち、すごくよく分かる。チャットはもちろん、故郷に電話すらできない時代の心細さはいかばかりか。
某国へ行ってしまう彼の姿と少し重ね合わせてしまう。

今日は会社で使うためにしまいこんでいた暖房器具を運ぶ。会社の近くには渡り鳥がやってきて、冬にしては暖かい日の光の中で羽を伸ばしたり水に潜ったりしている。去年までいなかった神田川で寝ていることもあり、何か環境が変わったのかもしれない。会社を出て護国寺に向かう。猫が多いと聞いて、見に行かねばなるまいと秋くらいから時期を検討していた。雨が降っていなくて良いひなたぼっこができるような今日は最適だろう。歩いているとミカヅキゼニゴケ(Lunularia cruciata)を発見。このマンションの植え込みだけ不思議とコケが生えている。元々別のところから連れてきたコケが育ったところに、このあたりで育っているミカヅキゼニゴケが住み着いたのだろうか。胞子体を見たことがないので、つけてくれるまで地道に通うつもり。

ミカヅキゼニゴケの学名Lunulariaは、月のLunaからとられている。月と言われると学生時代に読んでいたルーンクエストのことを思い出す。TTRPGのルールブックを一緒にやる人がいないので、一人で細々と読んでいた。正確に言うと、一緒にTTRPGをプレイする友人はいたのだけど、ルーンクエストはルールが複雑すぎてもっと簡単なD&Dなどをプレイしていたのだった。ルーンクエストには風や火のようなルーンを信仰心が個人のアイデンティティとなっており、月のルーンは女神を信仰する重武装集団だったはず。その時に初めて月が狂気と結びついたくらいには自然のもたらす人間へのはたらきには鈍感です。やがてプログレを聴くようになってPink Floydにつながり、内田善美『星の時計のriddle』、リャマサーレスの『黄色い雨』『狼たちの月』へと、個人的には一本の線をたどってきたような気がする。美しく力強い狂気の線が見える。

コメント