コケカツ!とは野山に分け入ってコケを見ること。撮るだけで採らない。
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと』に似てる本てなんだろと考えてたら、十二国記『月の影 影の海』が真っ先に思いついた。苦難に挫折しそうになりつつも、苦難から技術を習得して克服する、そういう物語に感動しやすいみたいだ。
コケカツも苦難とまではいかないけど、何十年も文系やってきたから理系の問題を考えるのが難しい。コケが好きな人たちの飲み会に参加すると、楽しいのはもちろんだけど、やはり知識や経験の差を如実に感じる。
「ヤンマタケが大量に発生する場所があってさ」
ヤンマタケはトンボに寄生する菌で冬虫夏草の仲間。生きた姿のまま固まってしまうのだ。
「トンボの生態からして地面などで感染するのではなく、出現する場所も限られているから、空気中で感染する(気生型)」
「カマキリの中にいるハリガネムシのように、寄生主をコントロールして菌が広範囲に飛ばせる場所を選んで硬直させてしまうのでは」
言葉にするとそれほど難しい話じゃなさそうだけど、脳みそをもっているわけでもない菌がどうして拡散できる場所を把握できるのか、不思議です。寄生できると脳を支配して身体を動かせるようになるのはなんとなく分かるけど、空間把握を含めた視覚まで操作できるというのが不思議。
ブライアン・オールディス『地球の長い午後』では、未知の惑星に降り立った人間が樹状から落ちてきたアミガサタケ(ダニや蛭みたいだ)に支配されて、アミガサタケの繁殖に適した場所を求めて彷徨う話だったと記憶しています。その時はアミガサタケの思考と人間の思考は一応分離しているのだけど、身体はコントロールできない。でもたぶん、実際に人間が身体を支配されたら思考自体も変わってくるのではないか。熱が出て動けない時とかに「よし、これからがつがつ肉食うぞ」という考えにはならない。
ヤンマタケの菌は人間も鳥も吸っているはずだけど別に身体が硬直したりしない。年中漂っていて秋になってトンボが飛ぶとそこにだけ入りこむことができる。何のために存在しているのか不思議になるけど、そんな問いは無意味で、ヤンマタケはただ繁殖するためだけにトンボを操る。それだけのことがとても遠い。
冬虫夏草についてはこちらのTogetterも参考になります。
こんなことを楽しく話せる知人ができて、楽しく聞ける自分がいるのは5年前には想像もできなかった。世界は広いことを思い知るし、知らない自分がちょっと悔しい。
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