コケカツ! 奥多摩

クジャクゴケ群落 Bryophytes
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きちんとした調査はないようですが、苔には春に蒴を出す種類と、秋に出す種類があるようです。同じ種でも気温や湿度などによって変わるのかもしれません。ほとんどの種類は春に出しますが、スギゴケの仲間には秋に出すものもあります。今回はクジャクゴケの胞子体を目指して、水害の記憶も新しい奥多摩に行ってきました。わずかながら紅葉が始まっています。

奥多摩某所

台風の崖崩れが見えるだけでなく、未だに川の水量も多く、場所によってはアスファルトの上を川のように流れていました。普段水がないところも濁流のようになっていたり、改めて台風の威力を思い知る一方、山の保水力のすごさも感じます。「緑のダム」は多少揶揄して用いられるようですが、山を削って谷を沈める人工のダムとどれだけ差があるのか、本当のところは分からなさそうです。

普段乾いている道路が水浸し

普段乾いている道路が水浸し

さて、今回のコケカツ!目的のクジャクゴケ(Hypopterygium fauriei)が去年・一昨年に比べてぐっと増えています! 以前地面を切り払われてすっかりいなくなっていた場所にも戻ってきていました。これはうれしい。切り払われても地面に残っていた仮根や胞子が成長してくれたのかも。
ここのクジャクゴケは妙に明るい黄緑色から図鑑通りの濃い緑までさまざま。今がちょうど胞子をまく時期で、あちこちで二重になった蒴歯が開いて、胞子の緑色が見えていました。
葉の先が白くなっているものは枯れ始めているということ?

クジャクゴケ

クジャクゴケ

クジャクゴケ:腹面

クジャクゴケ:腹面

クジャクゴケの隣に群生していたのがオオクラマゴケモドキ(Porella grandiloba)。クラマゴケというシダに似ているからクラマゴケモドキ。さらにオオクラマゴケモドキとヒメクラマゴケモドキは大きさがほとんど同じという、形や大きさは分かりやすいのに分類となると途端にやっかいな苔類。
葉に丸みがあって葉先の毛がなければオオクラマゴケモドキ、
葉先に毛があったらクラマゴケモドキ、
葉先が尖っていたらヒメクラマゴケモドキ、
だと思います。

オオクラマゴケモドキ:背面

オオクラマゴケモドキ:背面

オオクラマゴケモドキ:腹面

オオクラマゴケモドキ:腹面

のっぺりした葉状体からちまちまと無性芽を出しているホソバミズゼニゴケ(Apopellia endiviifolia)。フリルのようとも言われる無性芽の形がおもしろい。大きくなるとのっぺりしちゃうのに。

ホソバミズゼニゴケ

ホソバミズゼニゴケ

このスポットもう一つの主役コウヤノマンネングサ(Climacium japonicum)。増水や崖崩れで流されていたらどうしようと心配していましたが杞憂に終わり、いつもの切り株にごっそり生えていました。今回の発見は切り株の表面に近い部分で地下茎がつながっていたこと。相手は木なので奥まで地下茎が入ることはないでしょうが、木の皮が剥がれていても地下茎がつながってコウヤノマンネングサが育っている。首の皮一枚でつながった、文字通りぎりぎりで生きていました。

コウヤノマンネングサ

木の皮というより地下茎だけでつながっているコウヤノマンネングサ

木の皮というより地下茎だけでつながっている

ホウオウゴケの仲間にも秋に蒴をつける種類がいるようです。トサカホウオウゴケ? ホウオウゴケは種類がありすぎる上に、全部同じに見えます……。

トサカホウオウゴケ?

秋に蒴を出す種類は、秋に胞子をまくタイプと、このまま越冬して春にまくタイプとがあるようです。クジャクゴケは前者で、4月くらいになると葉の形はそのまま美しく広がった、小さな植物体を見ることができます。この場所がどうか誰にも荒らされませんように……。

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