2017年の読書部活動報告

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Twitterを主戦場にしていると、ついつい140文字以内に入るような文章ばかりを考えてしまって、長い文を書くことが億劫になって更新が滞ってしまいます。本当なら読書会の記録や苔観察の記録をつけて、数少ないであろう同好の士に役立ててもらえるようにしたいのに。わざわざ独自ドメインを取っている意味がありません。とりあえず今年の読書会について簡単にまとめておきます。

2017年1月の読書会はコルタサル『石蹴り遊び』が課題図書。主人公がパリとアルゼンチンを彷徨う姿について、「石蹴り遊び」のように軽々と跳びながらもラストの転落について語り合いました。

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隔月で開催している読書会ですが、2月には川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』がSFというかファンタジーというか、とにかくすごい小説だと思って急遽読書会を開催。日本人の著書で読書会を開くのは10年くらい前に奥泉光『モーダルな事象』、町田康『告白』、円城塔『Self-Reference ENGINE』あたりからほとんど選ばなかったので、かなり久しぶりで新鮮な感動がありました。

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3月くらいから苔の胞子体が見られる季節なので苔側に軸足を置き始めましたが、この月は閻連科『炸裂志』読書会で訳者の泉さんにお越しいただいたのでした。体調不良にも関わらず中国滞在経験が長く著者とも交流がある方ならではの意見を聞くことができました。普段は読書会に編集者や翻訳者を呼ぶことはしないのですが、いざやってみると有意義な時間になったのでポリシーが揺らぎそうな経験でした。

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今年最大の話題になった本といえばHaruki Murakami氏の『騎士団長殺し』でしょう。個人的には全く理解できなかったので、むかしからの読者が集まる会に潜り込んでいろいろお話を聞くことができました。ぜひ年に1冊くらい出してバブルのあたりで止まっている世界観を提供し続けてほしいものです。

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5月は苔活動に夢中で読書会はお休み。6月にはヴァージニア・ウルフのデビュー作『船出』を課題図書にしましたが、ここまで大っぴらに訳されていない本はそれなりに理由があるのだなあと納得。それでも作中にダロウェイ夫人が登場するので、『ダロウェイ夫人』を読んだらちゃんとおもしろい(特にナイフをちゃっちゃっとする人)ので、有名な著者の有名な著作、いわゆる古典は今読んでもおもしろいものです。

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7月に引っ越して持っている本を減らすためにスキャン・PDF化したら、保存しているハードディスクが壊れてスキャンしたてのデータが8割消えたという悲しい事件がありました。幸い引っ越し前にバックアップをとっていたのですが、スキャナーを借りて有給と夏休みを費やした3日間が無為に終わるというのはなかなか心を抉られるものがあります。

9月には短篇で読書会をやってみるのはどうだろうと思い、ナボコフ「復活」(『ナボコフ全短篇』所収)で開催。短篇を読むのは簡単でも、本自体が1万円近くすることもあり参加者が伸び悩んだのはいい経験になりました。本作はナボコフが若いときの作品ということもあり、因果応報が分かりやすいのもあって会自体は(本の重さを除けば)和やかに進んだように思います。

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9月は長篇でも開催していて、『キャッチ-22』! これは今年一番参加希望者が多くて、お断りしてしまった方も出てしまい本当に申し訳ないことです。どこまでが真実で、どこまでがヨッサリアンの妄想か、議論は尽きません。

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次は11月に長篇ということでエンリケ・ビラ=マタス『パリに終わりはこない』。個人的にはできないことをできないとうだうだ言うだけの小説は苦手なので読み終えるのに難儀しましたが、ダメさに共感する人も多く、意見がはっきり分かれたのが興味深い。

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今年は読書会の課題図書をTwitterの投票で選ぶことにし、わたし一人では想像もつかない本が課題図書になることもしばしば。2017年最後はトルストイ「イワン・イリイチの死」という古典でしめくくることになりました。後期トルストイのキリスト教最高主義はともかく、短篇小説で読書会を行うことは長篇になるとともすれば何について話しているか分からなくなる曖昧なところがなく、普段よりも短い時間でしっかり決着がつく割り切った感じの会になりました。

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わたしが苔活動に勤しんでいることもあってあまり頻繁に更新できていませんが、来年はサイトの更新を週に1回のペースなるよう、苔に本に充実した1年にしたいと思います。ご縁があればぜひ読書会にお越しください。

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