2017年4月は騎士団長を殺す作業に振り回された

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Haruki Murakamiを読むのは『海辺のカフカ』が出たときに読書会をして以来、通算4冊目くらい。鼻につく感じがどうしてもなじめなくて、人に話を聞いたり解説本を読んだりしたけど、やっぱりどうしてこれだけ評価されているのか分からない。

4月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:2760
ナイス数:280

ひぐらしの森 (ぶーけ コミックス)ひぐらしの森 (ぶーけ コミックス)感想
夢であふれる「時への航海誌」にまずは存分に浸りたい。日向くんのツンデレ! 「7月の城」あたりではSM&羽衣要素も加わり幻想性がぐっと強まる。スーラと紛うような点描、布団の模様ひとつさえ手描きで、一つ一つの描写が完璧。好きな画家はと問われたら間違いなくあげる内田善美、『星の時計のLiddell』が絶賛されますが、読んでいて楽しいのはぶ〜けコミックスのカジュアルな恋愛ものだったりします。表紙の柔らかい色も電子では出せない優しさ。
読了日:04月27日 著者:内田善美
新古今和歌集〈上〉 (角川ソフィア文庫)新古今和歌集〈上〉 (角川ソフィア文庫)感想
常識なのかもしれないけど、季節の花や月、風のような森羅万象を順番に配置。単に春夏秋冬だけでなく、春の中でも梅から桜を待つ気持ち、咲いたと思ったらすぐに散るはかなさ、さらに時鳥や五月雨に続く新緑へと季節の移り変わりが読み取れる仕組みになっているのに驚き、感銘を受けました。徹底した季節感のグラデーションは選者から後鳥羽上皇に繋がれた綿密な配慮の所以と思われます。後半は哀傷・離別・羇旅とネガティブさと無常の哀しみが歌われ、静かに下巻へと続く。
読了日:04月22日 著者:
ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集感想
作家が写真家つけて紀行文書いたらおしまいなんだな。いつまで無邪気してるんだ、というのがHM氏苦手な理由なのかも。ノーベル文学賞を取りざたされる作家が、21世紀にAutumn Leavesのファーストプレス入手して喜んでいるって、無邪気通り越して罪かも。短パンニューバランスって、永遠の少年を目指しているのかしら。
読了日:04月18日 著者:村上 春樹
知りたい 会いたい 特徴がよくわかる コケ図鑑知りたい 会いたい 特徴がよくわかる コケ図鑑感想
手頃な大きさ・分かりやすい写真・特徴を捉えた解説と三拍子揃ったコケの解説書というのは難しい。専門的な図鑑は素人では使いこなすのが難しく、古い手引き書は写真が古くて現場で照らし合わせるのには厳しい。そういうところに市街地から屋久島まで幅広くそこそこメジャーなコケを集めた図鑑が届きました。表紙にビニールカバーがかかっているので、濡れた場所でも安心して使えそう。加えてそれぞれの種に多すぎない解説があり、似ている種についても書き添えてあるため、普段「どっちかな?」と悩むコケも見分けがつくようになっている。
読了日:04月17日 著者:藤井久子
街なかの地衣類ハンドブック街なかの地衣類ハンドブック感想
つくばで開催された地衣類観察会のために読了。地衣類といってもかなりいろいろな種類がいて、市街地だけでも50種類以上の地衣類が紹介されている。わたしの好きなカブトゴケや樹状型は市街地では稀ですが、普段見逃してしまう種がこれだけいるということにびっくり。藻類と菌類のハイブリッドはとても地味に効率よく生活していて、人間もこんな感じで進化できたら便利そうだと思う。薄く持ち運びやすく作られている本書を手に、ルーペを持って郊外の公園を歩けば一日中楽しく過ごせそう。
読了日:04月17日 著者:大村 嘉人
地衣類のふしぎ コケでないコケとはどういうこと?道ばたで見かけるあの“植物”の正体とは? (サイエンス・アイ新書)地衣類のふしぎ コケでないコケとはどういうこと?道ばたで見かけるあの“植物”の正体とは? (サイエンス・アイ新書)感想
地衣類の解説が中心で、個々の種について詳しい説明がある図鑑のような本ではない。藻類と菌類が共生する地衣類について概要を知るには良い本。菌類が体をつくり、守られている藻類が光合成をして菌類に栄養を与えている基本的なしくみを知ることができ、普段見ているコケ植物とはちがうなあと改めて実感。地衣類に興味がなくても、不思議な生活サイクルを概観することができるので、文章が多い生物読み物としても楽しい。
読了日:04月17日 著者:柏谷 博之
落穂拾ひ・聖アンデルセン (新潮文庫)落穂拾ひ・聖アンデルセン (新潮文庫)感想
太宰治の徒弟という肩書きはいらないほどに独自の世界観を描きだせる作家。師匠に負けず劣らずダメな感じで、手を出せずじまいになってずるずる引きずるタイプ。しかし、人を思いやる優しさがどっかと根を張り、「聖アンデルセン」のような繊細な美しさから、「メフィスト」のようにユーモア感あふれる自虐まで幅広い作風を生み出せる作家。今だったら森見登美彦あたりにカテゴリされるかもしれない。市井のささやかな喜びやどうしようもない哀しみを描く「夕張の宿」が珠玉。入手困難なのがもったいない。
読了日:04月17日 著者:小山 清
シェル・コレクター (新潮クレスト・ブックス)シェル・コレクター (新潮クレスト・ブックス)感想
せっかくの美しい描写がアイデアが先に立ちすぎて埋もれてしまいがちなのが残念。特にマジック系の話はリアリズムに重心を置いているのに短編であるために描写が足りず、展開が急に見えてしまう。一方で、描写から発露する感情、生命の勢い、衝動はとても強く、礼儀正しい人々の間に抑えきれない力が描かれることで日常を打破する、今この時点から地続きである見えない力を感じられる。短編を中心に書いてきたようだけど、長編の方がより細密で、作者の力が活きるように感じます。
読了日:04月13日 著者:アンソニー ドーア
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編感想
人生で1000冊以上の本を読んできましたが、まちがいなく本書は最も心に残る本でした……、Haruki、お前こそが真のおっぱい星人だっ。怒濤の少女おっぱい描写が続く終盤、世界がおかしいのかわたしがおかしいのか分からなくなりました。ソローキン、バロウズ、段鬼六を超える逸材がここにいたのだ。まりえちゃんちの猫がすごい後出しだとか、なぜか病院にある出刃包丁なんてささいなこと。まりえちゃんが1喋ったことを3000にもふやかした上、2頁に1度膨らまない乳房のことを延々と語る主人公。おまわりさーん!
読了日:04月07日 著者:村上 春樹
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編感想
これはひどい。不都合な存在は一切認めない閉じられた世界、物語のための物語だから、著者とファンにとっておいしいものしか出てこない。オペラ(リヒャルトをリヒアルトと表記)、車(ジャガーを手なずけられた獣とするの何回目?)、マイセンとバカラと古伊万里の組み合わせには窓を開けて叫びたい、「だっせーーーーー!!!」そんなにブランドに拘るのならなぜ絵具にはこだわらない? パソコンはWindows、Mac? 著者の知覚しうる最高だけを並べた世界は、金で選手を買い漁る金満スポーツチームのように見えます。わたしはきらい。
読了日:04月05日 著者:村上 春樹

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