風にそよぐキヨスミイトゴケ(Barbella flagellifera)

Bryophytes
野生のキヨスミイトゴケ
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木の枝などにぶらさがり、風にそよぐキヨスミイトゴケ。見慣れなければ葉の一部として見過ごしてしまいそうだけど、一度気づくと嬉しくなりそれからはずっと探してしまう。名前の通り細く糸のように絡まり、樹木だけでなくある程度高さがある場所ならどこにでも絡みつく。手のひらの大きさくらいの玉になり、苔界では瀟洒と言えるのでは。地衣類ではサルオガセ、植物にもサルオガセモドキ(新宿御苑温室の最後に垂れ下がっています)など、垂れ下がる植物というのは独特の趣があります。

野生のキヨスミイトゴケ

キヨスミイトゴケ全景

ところどころ枝分かれして絡まりに一層拍車がかかります。ほぐしてやると枝分かれがはっきりして、茎もしっかりしている。なんとなく枝分かれした方の葉が小さく、葉の先端にある透明尖が小さいように感じるのは成長度合いが違うから?

キヨスミイトゴケの枝分かれ(分枝)

顕微鏡を持ち出して先端から見ていきます。糸状の透明な先端がかなり長く伸びています。

キヨスミイトゴケ:透明尖

我が家の顕微鏡は写真にすると狭くなってしまい、肉眼で見るよりも範囲が狭まります。なので、透明尖・葉の中心部・葉の根元と分けて撮影。中心部に中肋は見えません。平凡社図鑑によると「中肋は細く,葉の中央以上に達する」とあります。もしかすると写っているのかも?

キヨスミイトゴケ:葉の中心部

苔の中でも蘚類は葉の根元両端で細胞の形が変わることがあります。この部分を「翼部」と呼ぶそう。図鑑では明記されていませんが、中心部の細長く端が丸みを帯びている細胞とは異なります。翼部は細胞がもっと短く四角い。中肋があることもはっきり分かります。

キヨスミイトゴケ:翼部

イトゴケ属にはキヨスミイトゴケの他にただのイトゴケもあります。見分けるポイントは細胞にあるでっぱり(乳頭・パピラ)。パピラが1つだとキヨスミイトゴケで、複数あるとイトゴケ。とはいえ、関東ではイトゴケが報告されていないので、ほぼまちがいなくキヨスミイトゴケのはず。一応パピラも確認してみたいと思いますが、パピラを見るためには顕微鏡の倍率がある程度必要なようです。ちょっと写真があやふやですが、波間に浮かぶ泡のようなパピラが分かるでしょうか?

キヨスミイトゴケ:パピラ

キヨスミイトゴケ:パピラの位置

繊細で可憐なキヨスミイトゴケ、さぞ論文もたくさんあるだろうと思ったら、Ciniiで探しても見つからず……。蒴の有無や空気の清浄さなど、調べたらおもしろそうなところはたくさんあるのですが、案外メジャーなので誰も手をつけてないのかな? なお、キヨスミイトゴケの名前の由来は千葉県にある清澄山らしいです。ハイキングも兼ねて一度訪れてみたい。

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