今年2回目の奥多摩。前はまだ寒い時期で、タマゴケを確認しただけで終わったところなので、今回はしっかり見ていきたい。ここは苔の観察を意識してから初めて訪れたので、ちょっと特別な場所という思いもある。
苔類というとジャゴケが真っ先に思い浮かぶが、ああいう葉状体の苔類はほんの一部で、大部分は茎をもつ「茎葉体(けいようたい)」になる。そして、そういう苔類はまず肉眼では区別がつかない。区別どころか、緑色の細かい粉のように見える。抹茶の粉をもっと細かくしたものが木にくっついていても、黴くらいに思って通り過ぎるのがふつうだろう。そこをルーペやマクロレンズをもったカメラでじっと見つめると、上記のような不思議な形の苔が見つかる。でも、種類がさっぱりわからないので、いつか平凡社の図鑑でじっくり調べたい。
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今回は、乾燥している蘚類に水をかけて変化を見るということを多くやってみた。春の間は比較的潤っていることが多いのだけど、5月に入って晴れの日が多かったせいか閉じている苔が多かった。一昨日それなりに降ったはずなのに、乾燥している場所が多かったように思う。あと考えられるのは、蒴の季節が終わると保湿能力が変わるとか? 単純に気温が高いことが影響しているのだろうか。
クサノオウだろうか。名前がかっこいい。動くものに弱いオリンパスTG-3だが、蜂が思ったよりきれいに撮れたのは光が強かったからかもしれない。なお、毎年発売されていたTGシリーズだが、今年はTG-5ではなくTG-Trackerとしてアウトドアに特化したスタイルにリニューアルされてしまった。これはいよいよ一眼レフとマクロレンズに手を出すときが来たか。
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すっかり定番になったナミガタタチゴケ。しかし、都心の公園などで見る同種よりもずっといきいきしていて、ずっと大きい。葉のぎざぎざ(鋸歯)と、しわ加減が見分けるポイント。……あんまり葉にしわが寄っていないので、もしかすると別種のタチゴケなのだろうか。
「蒴の赤い帽が美しいのですが、蒴柄は短く、蒴は雌苞葉に沈生」と要素が似ているので、これもケギボウシゴケのような気がする。リンク先よりも葉の部分が大きいところがちょっと怪しいけど。きちんと蒴が中心に埋もれているところを撮れていない……。
今回はタマゴケの蒴も終わっていまいちだったな……と少し気を落としながら帰ろうとした時に、突然あたりを連続で引く。苔は観察力ももちろんだけど、運も相当関与していると思う。「運」という考え方はあまり好きではなくて、自分の積み重ねが結果になると思っているのだけど、いかんせん小さい苔類は肉眼で捉えることができないものだから、いい苔類が見られるかどうかは運と言い切っていいと思う。細胞一つ一つが連なってできた葉は向こう側が透けて見えそうで、本当にきれい。
そしてやっぱりいたアブラゴケ。行きでは気づかず、帰りに見つけられるというのもまた運。こちらも細胞が連なって編み目のようになり、光沢とあいまって美しい。意外に見つけづらいしそれほど大きい群生になっているのも見たことがないので、本当にうれしかった。
この写真が撮れたことで完全に苔類派に転向した。保育社の図鑑では「葉細胞は大きく、30ー60㎛」とある。現場で見たときには乾燥して葉に隙間ができているのかと思ったが、この網目状の一つ一つが細胞なのだ。「1/2まで2裂」するところもおもしろい。
いつも思うのだけど、苔のように水分を全身の細胞それぞれから吸収するような原始的なしくみなら、形態が最適化されてこんなに多様になる必要はないと思うのだけど、現実はちがう。目に見えないような小さい種が、さらに細部ではそれぞれ形が異なる。どうしてそんな進化を遂げただろう? 本当に微妙な環境の差異に対応できないから、各地でさまざまな適応を果たした結果なのだろうか。
観察に夢中になって、帰りのバス停にはぎりぎりの到着になってしまったのが反省点。目の前でバスが1台通り過ぎて、「ああっ、まだ既定の時刻じゃないのに……」と悲しみに沈んでいたら、休日なので増便がすぐ後にやってきた。とはいえ、16時台の早い時刻の後が18時台になってしまうのは不便なので、西東京バスにはぜひ17時台に増便をご検討いただきたい。
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