苔の中には石灰岩を好む種がいる。一般的な植物は石灰岩を好まない(栄養が足りないらしい)が、逆に植物にとっての栄養がじゃまになる苔が石灰岩の地域に適応したということなんだろうか。石灰岩といえば秩父。セメントなどは石灰岩でできていて、武甲山などはセメントをとるために山頂が低くなったとか。他の山にも好石灰岩性の苔がいるのかどうか確かめるために、まずは簡単に行ける子の権現を目指した。
西武池袋線西吾野駅でおりて、通常は左に曲がって山道をまっすぐのぼっていくのだろうが、同じ道を二度通ってもおもしろみがないと思い、駅から出て右に曲がり、舗装されたルートを上りに使う。しかし、苔的に退屈なので山道に入って道なき道をがりがりと進む。タマゴケとコツボゴケの蒴を見られたことが今回の大きな成果。
民家の影などに自然に生えているエゾスナゴケ。前日が雨だったのできれいに開いている。
上りの道に沿って流れる小川はとてもきれいで、真上から魚影が見える。1羽だけいた鴨は魚たちを狙っているが、速度ではとても追いつけなさそうで、石をくるりとまわりこまれていた。
ハイゴケ、シノブゴケ、ギボウシゴケ、フデゴケあたりが道ばたに目立つ。空気がきれいでいいところだから、たくさん苔が育つんだろうと思う。このフデゴケは背の高さほどもある石灰岩の塊に生えていたのだけど、これまで見たフデゴケは土の上が多かったので、石灰岩上でもやっていけるんだと感心した。
ハイゴケの仲間(キャラハゴケ?)だと思うのだけど、まったくわからない。こういう種を見極めるためにも、やはり平凡社の図鑑は一家に一冊必要なのだと思う。
コツボゴケにも似ているけど、葉の付き方がちがうし、もっと大きいからツルチョウチンゴケだと思う。大きい葉をつける苔を見ると無条件でうれしくなるのはなぜだろう、肉眼ではっきり見えることがうれしいのだろうか?
数日前にTwitterで同じ菌類を見たばかり。なのに、まさか自分が遭遇するとは思わず「変わった菌類だ」という感想だけで終わらせてしまった。これから木材を腐らせていくという意思を感じさせる伸び方。
コツボゴケは市街地でもよく見かけるけど、蒴はめったに見られない。石老山へ行ったときに道ばたで見つけて驚いたが、今回は山中の人気がないところで大量に発見。それでもちょっと離れると蒴が見当たらなかったりする。……コツボゴケとばかり思い込んでいたが、「身近なコケを再観察~コツボゴケの見分け方~」を読むと、こちらには葉先にぎざぎざもないし、コツボゴケより丸いかもしれない……。オオバチョウチンゴケかツルチョウチンゴケそのものの可能性が高い。うーん、奥が深いな。
ムチゴケと思しき個体はからからに乾いていたので、霧吹きで潤っていただき、リングフラッシュを使って撮影。ムチゴケは暗いところに多いので、フラッシュなしでは撮影が難しい。もしかして、苔類は全般的に蘚類よりも暗いところを好むのかな(ジャゴケのような元気なやつらを除く)。
今回も無事タマゴケに会えた。びっくりしたのはしわが出て萎んでいる個体があったこと。丸々としたものか、すっかり胞子を出し尽くして薄皮だけになったものしか見たことがなかったので、胞子を出すと萎んでしまうのかとびっくりした。なんとなく、あの丸さだけは最後までキープするものかと思っていたので。
スギゴケはよく見るけど、雄花盤は案外見ない。スギゴケは大きくて細いので先端にピントを合わせづらく、かっこいい割にうまく撮るのは難しい。今回もいまいち。
子の権現は登山も苔もどちらも楽しめる、なかなかいい場所。どちらの初心者も気軽に体験できそうだと思った。
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