いろいろあって本を読んだら不安になる日々が続く。
エミリ・ディキンスン詩集の感想
鉛のように重たい曇天の中をひとひらの羽が風に翻弄されている。神と詩と自然を愛し、それでいていつも死からの視線を浴びていた。季節と対話し、光を脱ぎ捨て、真の世界は歓喜に満ちて光輝くと信じていた人。白い光に全身を包まれるような、清澄な体験ができる一冊です。
読了日:8月16日 著者:エミリー・エリザベス・ディキンスン,中林孝雄
ラグタイム (ハヤカワ文庫NV)の感想
今年7月に亡くなった作者の代表作は、絶版になってるのがもったいない名作。1900年代初頭の希望にあふれたアメリカを舞台に、あるブルジョワ家庭の静かな崩壊を描く。魔術師フーディニや自動車王ヘンリー・フォードなど実在の人物が顔を出しつつ、中心に据えられるのは黒人がまだ人権を持たない時代に、白人が抱く「常識」だ。北極探検や映画の発明などアメリカの発展を担う技術革新が行われながらも、1865年に事実上奴隷制が撤廃されてから50年もたっていない時代の人々の心持ちというのはそう簡単に変わっていないのだと思い知る。
読了日:8月15日 著者:E.L.ドクトロウ
ティム・ガンのワードローブレッスン ~“最高の私"を引き出す服を選ぶためにの感想
おティムです! 夏服が今ひとつ決まらないなってくよくよしていたところに出会えたのがこの本です。もう感動・感動・感動です! 服装の歴史をひもときながら、わたくしおティムの毒舌がやんちゃに暴れ回ります。カーゴカプリパンツとヘソ出しルックはお下品。ヨガパンツよ、そこをおどきなさい! あなたの部屋のおぞましい極彩色を一掃するのに役立つはずよ。ジャンルはちがいますが、『亡命ロシア料理』のような皮肉の効いたスノッブ感が楽しめる人におすすめです。
読了日:8月8日 著者:ティム・ガン
舟を編むの感想
文系スポ根なので泣くには泣く。しかし、『ストーナー』と本作、 どうして差がついたのか……慢心、環境の違い……ではないのだが、本作では誰も罪をかぶらず悪人が登場しない。ゆえに読者としてはこの舟にただ漫然と身を任せればいい。わたしはそういう読書はしたくなくて、自分で舟をこぎたいのです。
読了日:8月1日 著者:三浦しをん
空色勾玉 (徳間文庫)の感想
選ばれしものの挫折と栄光。ドライに人が死んでいくところはプリミティブな世界観とマジカルな力による神話らしさがあってよかった。物語の組み立てられ上どうしようもないのだが、倫理観は一方でとても現代を反映したものであり、自然よりも人が上位に描かれることに疑問を持ちつつ読了した。
読了日:8月1日 著者:荻原規子
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