ほしいのは奇跡

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いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)
ミランダ・ジュライ
新潮社
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ミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』を読んでいる。著者紹介を読むと映画監督までやっていると知り、ちょっと驚いた。前作を読んでちんまりと小説だけを書く人というイメージを勝手に持っていたから、と思ってちゃんと調べたら前作だと思っていたのは、リディア・デイヴィス『ほとんど記憶のない女』だった。岸本さんが両方とも訳しているから、同一人物だと思いこんでしまったらしい。

ミランダ・ジュライの柳に風というか、勝手な空想をもやもやとふくらませていく短編はおもしろい。わたしが英語をネイティブにする知人がいないせいなのだが、日本語が話せない人とはどうも意思を疎通することが難しく、発想がまったくちがうんじゃないかと思いこんでしまうことがある。しかしこの本を読むと安心できる変さがあるのだ。ちょっと変わった同級生に久しぶりに会ったときのように、相手のことは理解できないけれども確かに同じ場を互いを害せずに共有できる。緊張感のない友好的な無関心。

「マジェスティ」で主人公が一聴惚れする『ほしいのは奇跡』という曲は、おそらくフィル・コリンズが歌って、後にマイク&ザ・メカニックスでとりあげた「All I want is a miracle」だと思う。マイク&ザ・メカニックスのマイクって元Genesisのマイク・ラザフォードだったのか、ということも知らないくらいのプログレファンとして、ちょっと驚いた。そして、「All I want is a miracle」は本国でぱっとせず、アメリカで人気があったというのも、なんだかミランダ・ジュライらしい選び方だなとほっとしたのでした。

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