読みたい本はなんですか?

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ジョン・ウィリアムズ『ストーナー』にはいたく感動した。「好き」とは何かということを改めて自分に問い直すきっかけになった。それは同時期に放映していた「ユリ熊嵐」を見たときにも思ったことで、「わたしの好きってなんだ?」ということ。

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大人になってSFに出会って、ラテンアメリカ文学の破天荒さにほれぼれして、ほかの現代文学もおもしろく読んでいるけど、本当に好きなところってファンタジーの先が見えないわくわくする感じだった。『指輪物語』をわきめもふらずに読んだこととか、映画化で盛り上がったこと、あの辺の素直さが最近失われつつあるかもしれない。新しくなくても流行でなくても、自分が酒を呑みながら楽しめるくらいの本を気楽に読むという姿勢を身につけたいと思っている(呑まなければそれが一番いいのだけれども)。

翻訳大賞や知人のすすめや盛り上がりがあるからこそ、『ストーナー』に出会えたわけだが、新しいものと古くても好きなもののバランスをとらないと、本当に自分が読みたい本を見失ってしまうこともありうるな、と思った次第。

そういうわけで、今日は瀬田貞二『幼い子の文学』(中公新書)を久々に手に取る。2005年頃に読んだようなうっすらとした記憶。中をめくるとたまたま最近読んだばかりの中野重治が小説も書いていて、それにいたく瀬田貞二は感激している。幼少時の記憶を鮮烈に描いた傑作と。ふむ、見つけたら読もうと思って古本屋の反対側の棚を眺めていると、岩波文庫に中野重治『梨の花』がある。これこそ瀬田貞二が激賞していた作品だ、とあまりの偶然に二冊とも購入。

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中野重治については、名作と名高い「夜明け前のさよなら」という詩がある。わたしはこれをずっと夜逃げの悲哀を描いていると思っていた。階下に住む家族それぞれに花をと言うけれども、うたっている自分は彼らが起き出す前にずらかろうという腹ではないか。そうしたら、ちがうんだと。階下の家族も仲間であり、決意を形にする美しい意思表示であると諭された。自分の読みのセンスのなさ、浅はかさにがっかりしたばかり。この『梨の花』と瀬田貞二のバックアップで、修行し直したい。そしてたぶん、わたしが読みたいのはこういうささやかな美しさとか喜びが描かれている本なのだと思う。

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