苔湯酒活動とは、山に登って苔を見て、下山したら風呂に浸かり酒を飲む活動のことである。今回は高尾山6号路に挑戦。
年に数回山に行くようになって、一応「山に登るの好きです」といえるくらいの趣味だと思っているが、5年以上登っていて初の高尾山。登山客が多いと聞いていたので、休日は無理。ならば平日に行けばいいではないかと有給を使って、いざ。
駅前にはまだギョイコウザクラの名残。川沿いには木々草花が適度な感じで、元気な苔が期待できる。
都内の山でよく見かけるシャガの花。看板には美しいだけでなく地面の保水にも貢献していると書かれていた。不思議な形。
コツボゴケ……かな? 葉に水分がたまっていて透明感が好きな種類。みずみずしさを見ていると「山に来たな」と思う。
オオトラノオゴケ? 先週登った三頭山でも大量に生えていて、岩の上などにひとかたまりになっている。手入れされていないドレッドヘアのようにもつれてからまりあっているので、こころの通称「もじゃもじゃ」。
球形の黒い朔が珍しくて撮った。ヒラゴケのなかまかな? 朔と葉のバランスが不思議なところが楽しい。花ではなく、実でもなく、胞子を出す器官の機能性みたいなところがおもしろいので、朔を見つけるとうれしい。
ムチゴケ? ぺたりとした質感のある緑色の珊瑚のよう。蘚類よりも苔類の方が伸び方に力強さを感じる。
見上げるとやっぱり緑で、大きな樹木と小さな苔の対比に目眩がする。苔の中を進む蟻と、森の中をうろつく人間、どっちも同じものだと思う。
6号路は迷うことのない一本道だけど、時々川縁に下りられるけものみちがある。作られたルートをなぞるだけでもたくさん発見があるけれど、ちょっと下りてみると水辺を好むゼニゴケなどがたくさん見られて楽しい。わかめみたいなマキノゴケ(?)。タコが足を伸ばしているようで不気味かわいい。蘚類は適度な水分を含んでいて触り心地がいいけど、苔類は何かが潜んでいそうで触るのはためらわれる。
見たかった苔の一つ、キヨスミイトゴケ(?)。土や石の上でなく、木の枝の上にしか生えないという生態の不思議。きっと、胞子が風に乗って別の枝に付着して、そこから地道に伸びていくのだろう。次の枝にたどりついて成長するまでのドキュメンタリーがあったらじっと見ていたいと思うが、それってドモホルンリンクルのCM的な非生産性を感じる。
ぼんやり川縁を歩いていたら騒々しくなってきた。子どもだ。まさかの遠足バッティング。小学生と中学生(なぜか女子だけ)に挟まれて身動きがとれなくなり、自分でも仏頂面になってくるのがわかる。しかし、それを癒やしてくれるのもまた苔。ジャゴケがにょろにょろしていて、ひゃっほうと小声で快哉を叫ぶ。
子どもにまみれながらかけ足で頂上にたどり着き、追いつかれる前にとっとと逃げようと1号路へ。饒舌なオオルリの声に耳を傾け、土手の蛇の踊りを眺め、通りかかった人に「タカオスミレ」の存在を教えていただいて二人で探しながら下山。
しかし、高尾山付近にはよい温泉がないので、結局そのまま帰宅。湯も酒も家でぼんやりと済ませる。酒は旭鳳酒造「純にして醇純 生酒」。安いのに生酒特有のふくよかな甘みでうまい。そしてもう高尾山はこりごり。
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