近所にかなり揃いのいい酒屋がある。入って左側はワインとビール、右側は日本酒と焼酎。右側の方が力が入っていることは一目瞭然だ。ワインばかり呑んでいた時はあまりがんばっていない品揃えで内心不満を抱えていてあまり利用しなかったが、日本酒を呑むようになった途端、店内が宝の山。ここで初めて一升瓶で買ったのが「新政 No.6 R-Type」。ワインとも日本酒とも思えないけど、一升瓶で確かに日本酒なインパクトある外見。そして酸味と甘みが突出していてうまい。日本酒って頭が痛くなるだけの辛い酒じゃないんだ、と開眼したのだった。
それから1年。毎週1升呑んできてある程度は自分の好きな方向性がわかってきたような気がする。古酒感の強いのは少しだけでいい。純米でものすごく辛口に感じるのは苦手。かといって吟醸香は抑えめでいい。プラシーボかもしれないけど、アルコール添加の吟醸酒は一番苦手。どことなく苦味を感じることが多くて、大吟醸くらすでもおいしいと思ったことがない。
好きなタイプは甘さと旨味と酸味がバランスよく同居している純米酒。こういうのは燗をつけてもうまいことが多い。これも思い込みだけど、アル添の吟醸酒は加熱するとバランスが崩れるものが多いように思う。元々冷酒が前提なので仕方ないと思うけど、冬はやはり燗をつけたいです。
そんな純米酒がしっかり揃っている近所の店で、12月くらいから生酒が並び始めた。呑んでみると驚くほどうまかったりする。味が濃いのと、火入れをした酒にはないフレッシュさが魅力。宗玄とか上喜元の生酒は別格で、「こんなにうまいものがあっていいのか」レベル。
2月の立春を過ぎるとそろそろ純米の生酒は減ってきて、アルコールを添加した「なましぼり」を見かけるようになった。当初は安い生酒だと喜んで買っていたが、どうもそれまで呑んできた生酒と違うなと思ってラベルをよく読むと醸造アルコールが入っている。うーむ、これも生酒なのか? ちょっと自分には合わない酒が多かったので、醸造アルコール入りは回避しようと目についたのが、吉田酒造の月山。他にも醸造アルコールの入っていない生酒はあるのだが、値段の安さと残り1本ということで手にとってみたら、これが大当たり。「特別純米 しぼりたて 無濾過生」は緑の苔むしたようなラベルも渋くて好きだし、味は甘さ・酸味・旨みのそろったオールラウンダー。残り物には福があるというのを実感した。
40を目前にして寒いときのビールは冷えるし、ワインは高価で和食には強すぎるし、と年相応におっさん化してきて感慨にふけっている。食と酒で年を実感するって動物のようで人間のようでおもしろい。
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