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コケカツ(93)全然普通じゃない『増補 普通の人びと ──ホロコーストと第101警察予備大隊』(1)

コロナウイルスで滅入っている時に読むべき本ではない。それでも手に取ったのは、死が身近にある状況とはどんなものなのかを考えてみたかった、歴史上どんな状況なのかを知りたかったから。 『増補 普通の人びと ──ホロコーストと第101警察予備...
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コケカツ(92)ゼーバルト『アウステルリッツ』冒頭から

ゼーバルト『アウステルリッツ』は著者と思しき語り手が、アントワープ中央駅の待合人の中からアウステルリッツを見出すシーンから始まります。 語り手はアントワープの「夜行獣館」で木菟や原猿類の丸々とした「射すような」目について語る。右ページに獣...
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コケカツ(91)ゼーバルト『アウステルリッツ』の肌になじむ感じ

すっかり春めいたけれども、コロナウイルスのせいで外出に自粛勧告が出て、人が集う形式の店舗や業態が軒並み経済的打撃を受けている。 一方で出版は好調で、書店や出版社から売上が伸びているという話を聞く。業界の片隅に身を置く者としては早く収束して...
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コケカツ(89)『ヴァルザーの詩と小品』

ゼーバルト『鄙の宿』で力の入り方がちがう文章を読んで存在を知ったローベルト・ヴァルザー。 全集も訳されていますが、まずは小手調べとみすず書房から出ている本作を手に取りました。このエメラルドグリーンのような色、「大人の本棚」というシ...
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コケカツ(86)『失われた時を求めて(5)ゲルマントの方へ1』は笑劇場

ドストエフスキー『悪霊』のアッパーさに挫折して、プルーストに戻ってきた。4巻が750ページ以上もあって時間がかかったのだけど、5巻は400ページちょっとなので、心なしかすいすい読める。 祖母の健康のために、語り手一...
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コケカツ(85)好きと名作の間

すばらしい作品と思っても、一度見たり読んだりしたら十分だなと思う作品を「名作」と言っていいのか。何度も見返したくなる作品は好きと言い切れるけど、そうでないものを「名作」と言っていいのか、自分には葛藤がある。 書籍だと、プルーストはたぶ...
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コケカツ(83)ゼーバルト『鄙の宿』(2)ローベルト・ヴァルザー

ゼーバルト『鄙の宿』は作家論というには短く、書評というには長い。作家のたどった運命と本の関係について語られるけど、それは日本の評論とはちょっとちがう気がする。うまく言えないんだけど、紹介されているのが1800年代の作家と...
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コケカツ(81)ゼーバルト『鄙の宿』(1) 現実主義者ヨハン・ペーター・ヘーベルは天使が妊娠する夢を見る

ゼーバルトを大事に思う気持ちが大きくて、なかなか全部一度に読もうと思えない。クリスマスのシュトーレンのようにちみちみと定期的に摂取している。読み終えると一つの大きなイベントが終わって、日常に戻り、またシーズンがくるまで押...
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コケカツ(78)中村江里『戦争とトラウマ』

あまり歴史の本を読まないのだけど、これは抜群におもしろい。戦争を通して精神病になった人たちの記録がきちんと調査されている。研究書なので堅い文章だけど読みづらくはない。 戦争のストレスが精神病を引き起こすって当然のことな...
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コケカツ(75)ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』読書会

参加者は10名。プルーストを読んでいるけど縮小版で全部読んだことにしたいと言ったら「プルーストマニ車」を作ったらいいと教えてもらいました。回すと『失われた時を求めて』を読み通したのと同じ効力があります。側面にエクレアのく...