サーシャ・ソコロフ『馬鹿たちの学校』(河出書房新社)

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馬鹿たちの学校
馬鹿たちの学校

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サーシャ・ソコロフ
河出書房新社
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分裂する人称が時間と実体を超越する。パーヴェル・ペロトーヴィチ先生の怒り、吃音症の叫び、ヴェートカのとめどない言葉の奔流。いったいこの本は何なのか、読後1週間経った今も、この読書というよりも「遭遇」としか言えない体験をどう言い表せばいいか分からない。

本書にあらすじはほとんどない。そもそも語り手が一人なのか二人なのかも分からないまま最後まで読み進めることになる。語りを揶揄するような意見が地の文で発生し、それに続けて周囲の人物も地の文で語り出す。主客の間にあまり差がないので、誰が誰だか区別がつかないことが多いが、おぼろげながら反体制派の地理教師がいて、片思いの相手がいて、と周囲の人物が見えてくる。

地理教師の物語はその中でもわかりやすい方で、声が街の中を流れて角を曲がり塀の間をくぐり抜けて語り手の元に届く場面は、ガルシア=マルケスのようなマジック・リアリズムを彷彿した。

あとがきに「現代ロシア文学の”古典”と呼ばれることを正当に要求する作品」とあり、こんな抽象的で五里霧中な作品が”古典”と呼ばれうるという現代ロシア文学の水準の高さに驚愕した。

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