電車で本を読むだけの旅

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130円で遠くまで電車に乗れるという話を聞いた。それで思ったのが、電車を読書スペースにすれば集中できてはかどるのではないか、というもの。大人になるとどうしても長編を一気読みすることができなくなる。やれ用事だ、仕事だ、眠いだ、と理由をつけて読み進めることができずに、いつの間にかまた本棚に戻されて省みられなくなるものです。いま読んでいるピーター・ケアリー『イリワッカー』はおもしろいけど長い。上下2段組でそれぞれ300ページ以上ある。これはほっておくと本棚へ帰ってしまうため、電車に乗りっぱなしなら本を読むしかないという集中作戦を決行した。

スタートは山手線某駅。途中でスターバックスコーヒーを眠気覚ましに買ったが、置く場所がなくて難儀した。もし次があるならペットボトル一択。上野駅まで出て、高崎線に乗り換える。休みの日の午前中はさほど混雑しておらず、長座席の端っこを確保し、『イリワッカー(下)』を読み始めるが、普段の疲れがたまってうとうとしてしまう。すると買ったばかりのバッグの持ち手にコーヒーを少しこぼしてしみにしてしまう。泣く。

思い出の地熊谷を抜けると、視界の果てに山が目立つようになる。もしかしたらあの山のどれかに登っているかもしれないわけで、そうすると向こうからもこの電車が見えるということだろうか。などとぼんやり考えていると予定していた高崎の手前で次の八高線に乗り換えられるとアナウンス。別に鉄道マニアではないので、きっちり目的地まで行くこともあるまいと倉賀野駅で下車。次の電車までは20分近くあるので、ホームの端まで歩いてみた。

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石のベンチにぐっときた。

八高線に乗り換えるとギーギー、ギシギシとうるさい。最後尾の車両では車掌室的なところが半分になっており、もう半分に1席だけ設けられて、電車愛好家らしい人物が楽しそうに座っていた。あれはいいな。

スーパーなども見えない風景が続いた後で、毛呂などに出てくると資本主義らしい大店舗が見えてくる。そして高麗川(こまがわ)で乗り換え、さらに八王子を目指す。しばらく乗っていると拝島の駅名がアナウンスされ、これならば新宿まで帰れるではないかと、またも目的地の前で途中下車して乗り換える。今回の旅は上野から最後の山手線までずっと端っこに座れるという、読書家には最高の僥倖を得られて、実に快適な旅であった。そして山手線に乗り換えてすぐ、無事に目的の『イリワッカー(下)』を読了。もう一冊吉田知子を持参したが、結局開かれることはなかった。そのくらい長大な作品ですが、だてにダブルブッカーを名乗ってはいないピーター・ケアリー、おもしろかったです。受賞作『オスカーとルシンダ』も購入済みなので、早めにとりかかりたいところ。

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