ハンナ・アーレント『人間の条件』をゆっくり読む(8)

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ついに来てしまったハンナ・アーレント『人間の条件』読書会。読書会なんて久しぶりだしー、哲学なんてわかんないしー、と緊張がマックス。会社でやるような発表は、毎日働いている中で自然と言葉にできるからあまり緊張しない。読書会の場合はどれだけ読んでも自分が求める状態にならない、書かれている文章を自分なりにでいいから理解している状態になっていないのが緊張の原因か。いやまあ、そんなの無理っすよ。会場となる早春書店さんの周囲をぐるぐる歩いて、しまいには近くの古本屋さんを覗いている。何をしにきたのか。

会場は既に全員揃っていた。とりあえず最初に言うことは、
「2章まで読んで話しましょうと言いましたが、通読できた方はいますか?」(2/8名)
「みなさん分かりましたか!?」(分からない)
ああよかった、わたし以外にも分からないと思っている人がこんなにいる。今夜限りの同士だとしても、こんなに心強いことはない。参加者の一人が、
「文章はなるほどとうなづいて読んでいるのに、ページの終わりにたどり着くと何が書かれていたのか分からない。3ページ進んで2ページ下がる」
と仰っていて、そうそうと深く頷く。苦行の共感、これぞ読書会。

一方で5年に1回の割合で、4回も読んでいる方も! ちょっと特殊な事情とはいえ、こういうお話を聞くとかなわないなと思うし、進めている側としては困った時に頼ってしまう(すいません)。
「公的領域とはInstagram」
「5章だけ読む」
というご意見もいただきました。そう、課題にした1・2章は後の3〜5章(労働・仕事・行動)の概略みたいなもので、具体性に乏しいところがある。
公的領域(ギリシアのポリスではたらかない富裕層が対話する)が、今ではInstagramをはじめSNSに置き換わる話がよかった。あえてInstagramとするところがポイントなはずだけど、時間切れで詳しく聞けなかった。画像前提というところに公的領域たる所以があるのだと思うけど……。

経済学の視点から読むというお話も斬新。哲学は哲学だと思い込んで読んでいたので、マルクス経済学を批判する(でも好き♥)という視点にもまた驚かされる。マルクスは単純労働最高!だけど、本書で展開されている労働<仕事<行動として観照最高! と対比する読み方があるのは、経済学側の話ももっと聞いてみたい(けど、まるくす主義者はこわいって聞きました)。

著者をとりまく状況から読み解きたいという話も。
本書が書かれた(1958年)アメリカは人工衛星を飛ばし、科学技術が成功し始める時期(「もう地球に縛られる時代は終わった」と言い切ってる)。一方本書が訳されたのは1974年で、学生運動の名残が訳文からも感じ取れるとか。
さらに『人間の条件』は本人がドイツ語で『活動的生』というタイトルで書き直して、文章に手を入れています。こちらの方が哲学色が濃いめで、ゆっくり読めるとか(みすず価格だけど)。

わたしなんていなくていいのではというくらい、でもこの場にいられて良かった、参加者の独特な意見が飛び交う楽しい2時間があっという間に過ぎていく。普段の読書会は4時間だから、半分だと全然話し足りない!

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