コケカツ(3)

アブラゴケ Bryophytes
アブラゴケ

コケカツ!とは野山に分け入ってコケを見ること。撮るだけで採らない。

2019年は異様にコケの本が発売された。2018年までは雑誌なども含め、なるべく出版されたものは入手するようにしていたけど、今年は京都限定のコケ雑誌が出た時点で収集欲がぷつりと音を立てて切れてしまった。無理、全部集めるのなんて無理。思えばサンリオSFだって、ラテンアメリカ文学だって、集めきれるものではなかった。ジャンル一つでさえ全てを掬い上げることは難しいということを知っていたはずなのに、また別のジャンルで同じことをしようとして悲しい気持ちになる。

コケは学術的に「蘚苔類」と呼ばれる。蘚類と苔類(とツノゴケ類)を総称した名前だ。蘚苔類を調べる人たちによる蘚苔類学会がある。年に2回発行される学会誌では、その年に出たコケに関する書籍の一覧も掲載されている。今年の分だけで例年の倍くらいになりそう。

コケについてどんな本が出ているかAmazonで調べるのもいいですが、コケイロさんにコメント付でまとめられています。忙しいだろうにちゃんと書籍をフォローしていてすごいなあ……。

コケのように爆発的に売れるようなものでないと、自然と著者が厳選される。怪しげな健康法やきくかきかないか分からない勉強法みたいな本は、雨後のイヌセンボンタケのように大量に発行されて玉石混淆となってしまう。コケの場合は怪しげな著者に書かせても売れないのがわかりきっているので、出自のきちんとした人しか書けない。ゆえに良書が多い。書籍って本来こうあるべきじゃないかなあと思う。数合わせのために出された本というのはそれなりにあって、10年前には「携帯」と書いていたところを「スマホ」にして、タイトルを変えて売り出したりする。こういうの淘汰されないの不思議です。

良い本といえば、10年以上読みたいと思いつつも数学のことは全くの門外漢だからと放置していた、遠山啓『無限と連続』。数式が出てこず数学者の歴史を物語ります。はしがきからもうかっこよさに溢れている。

 たしかに,論理的な正確さや厳密さが,数学として欠くことのできない一つの性格であることには疑いの余地がない.だが,数学のなかにはそれ以外のいかなる要素も存在しないのだろうか.数学者は論理という鉄仮面のなかに閉じこめられた哀れな囚人にすぎないのだろうか.
 原子物理学者は数学の力をかりて原子核のなかまでもぐりこむことができたし,また天文学者は数学の翼にのって星雲のかなたまで飛行することができた.

こういうかっこよさ、アイドルに熱狂するような気持ちに近い。ただ、存命の人にこういう感情を持ちにくいのは嫉妬のせいだろうか、素直になれないのだろうか。
アブラゴケのような珍しいコケに出会えたら素直になれるのに。

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