アンドリュー・ワイエス展@美術愛住館

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ここのところずっと映画館には行かず美術館に行くことが多い。フェルメール展、奇想の系譜展など、話題のものにはなるべく行くようにしている。東京に住んでいることで一番のメリットは美術館が多いことだ。実家近くにある美術館は森に覆われてマリー・ローランサンなどの印象派周辺をよく開催していたが、映画館は県庁所在地まで足を運ばなければいけなかった。子どもの時の記憶に今も動かされているということだろうか。

それよりは、動かないものを好むといったほうがいいかもしれない。コケしかり本しかり。映画やスポーツのように動いているものごとに自分の感情を合わせていくことは疲れる。また、その時の感情は本当に自分のものと言えないかもしれない。人にほだされるというか、その場の雰囲気に吞まれて冷静になった時に後悔するようなふるまいや考え方に陥ってしまうかもしれないという、ちょっとした恐怖心がある。

絵画の中でも特に時間が止まっている印象を与えてくれるアンドリュー・ワイエスの展示が四ッ谷の美術愛住館で行われている。聞き覚えのない美術館だけど、去年2018年にできたばかりだとか。そして、アンドリュー・ワイエスの絵を朝霞の美術館が持っているというのも知らなかった。『シカゴ育ち』とか『ワインズバーグ・オハイオ』を絵にするとアンドリュー・ワイエスになると勝手に思っている。

今回展示されているほとんどが家の絵。オルソン・ハウスという大きな家に姉弟が住んでいる。姉の方が有名な「クリスティーナの世界」のモデルになったクリスティーナで、小児麻痺で不自由な身体で移動している絵だったことを初めて知った。家が彼方に見えるのはクリスティーナの這って移動する距離感をそのまま表していた(実際の絵は妻や叔母をモデルの一部として組み合わせたそうです)。

オルソン・ハウスの牛、青い計器、霧に包まれたオルソン・ハウス、姉弟が死んだ後誰もいないオルソン・ハウス。アンドリュー・ワイエスは夢中になると筆圧が高くなったという。ただの線や点ですら、オルソン・ハウスの周囲を吹きすさぶ風だったり、飛ばされる藁屑のように見えてくる。さみしさや孤独を強い線と点と滲みで覆いながら、アンドリュー・ワイエス自身の愛着が伝わってくるオルソン・ハウス。つらく暗い環境でも地道にしぶとく生きていくアメリカ東部の空気に触れられる展覧会でした。

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