第62回読書部ウンベルト・エーコ『ヌメロ・ゼロ』

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2015年に発表されたウンベルト・エーコ最後の小説『ヌメロ・ゼロ』、英語だと「ナンバー・ゼロ」になります。過去の日刊新聞を作るという名目で集められた編集者たちは、(存在を確認していない)クライアントの意向に沿いつつ、読者をコントロールするような企画をたてて創刊号の準備をします。しかし、編集者の一人がムッソリーニに関わる陰謀論に手を出し、語り手を巻き込んで数奇な運命をたどることになる。いろいろな解釈がありつつ、芯のところはジャーナリズムのあり方についての意見が散見される、読みやすいけれども考えさせられる小説でした。

議論中はメモをとれないので、自己紹介時にあった意見を紹介します。
ネタバレを含みますのでご注意ください。

・映画「アンダー・ザ・シルバーレイク」に近い

・フェイクニュースにひっかかる人たちにありがちな、点と点を勝手に結びつけてしまう描写
・出世街道から外れた負け犬の人たちによる陰謀論で、陰謀論が好きな人は楽しく読めるはず
・ムッソリーニ救出以降のイタリアの近現代史については目が滑る
・『フーコーの振り子』と同じスタイル


・世界史全般が苦手だとつらい
・世界史の真実は検証できないが、本当のところがどこにあるか分からないところがおもしろい
・恣意的でないアウトプットはないので、『ヌメロ・ゼロ』創刊にまつわる企画会議は誰もがやっていること
・おじさんが簡単に女子にモテる流れはちょっといや(註:個人的には「遠心分離器タイプ」と命名しています)

・エーコで一番おもしろいのは『バウドリーノ』


・日本語でエーコの話をWebに書いてたら、ボローニャの大学からアクセスが続いた。ストーカーぽくて、現実とフィクションの境目を体験
・新聞社に声をかけられるところからおかしい。そもそもこの新聞社の存在自体が嘘かもしれない
・解説が有効に機能している
・イタリアは共産党が強く、南部はマフィアの力が強い
・虚構かと思わせて現実と地続きであることが書きたかったことかも?
・ブラッガドーチョという名前は「おおぼら吹き」の意味。しかし彼だけが真実に到達している…?
・ブラッガドーチョが車を買うのに悩むところは沼に沈んでいる感じでおもしろい

個人的には「新潮45」というのがツボでした。上記の参加者コメントもわたしが書いていることで、意図がどうしても含まれてしまいます。
自分の目で真実を確かめたい方は、2019年2月23日に行われるウィリアム・ギャディス『JR』読書会に参加しよう!

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