苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

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岡モス関東のコケ観察会に行ってきました

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「岡モス」とは岡山コケの会の略称で、コケの愛好家たちの本拠地が岡山にあるのは知る人ぞ知るひみつ。コケに関しては関東よりも関西の方が愛好家や愛好家の集いは多いみたいです。関東だと個人で観察会とか、博物館の観察会に参加というのが基本で、同好会のようなものは寡聞にして聞きません。愛好家の数自体は同じくらい多いと思うんですが、関東は開発が進みすぎて良い観察スポットを見つけるのが難しいせいかも。

岡モス関東観察会2018

岡モス関東観察会2018

今回は18人くらいだったかな? 蘚類のK先生、苔類のF先生、さらに岡山からコケの同定を生業にしているKさんが参加されて豪華な教授陣に教わりながら、いつものようにゆるゆると進みます。山に行ったというのにわたしの歩数計は1万歩越えてなかったのにはさすがに驚きました。

はじめに断っておきますが、当日は蘚類の解説が中心でした。ナガバチヂレゴケとハチヂレゴケとシナチヂレゴケの見分けるポイントとか。でも、わたしはある程度理解するまでは苔類一本に集中しようと決めたので、蘚類の話は詳しく聞いてませんすいません……。

まずは珍しいというヨシナガクロウロコゴケ(Dicranolejeunea yoshinagana)。学名の「ヨシナガナ」という語尾がちょっとかわいい。明治時代の吉永虎馬という植物学者が発見したそうで、彼の名前がつけられています。ヨシナガムチゴケ(Bazzania yoshinagana)も彼の発見だとか。
ヨシナガクロウロコゴケは名前の通り黒みが強い緑色で、小学校の時に使った絵の具ビリジアンを彷彿させます。

ヨシナガクロウロコゴケは腹葉が丸いのが特徴ですが、これだけ濃い色の苔類はなかなかいないので分かりやすいかも。

ヨシナガムチゴケ(Dicranolejeunea yoshinagana)

ヨシナガムチゴケ(Dicranolejeunea yoshinagana)

ヨシナガムチゴケの腹葉(underleaf)

ヨシナガムチゴケの腹葉(underleaf)

名前は聞いたことがあるけど見分けのつかない小さな苔類がいます。主に葉上苔類(ジャゴケのような葉状苔類と音が一緒で紛らわしい)と呼ばれる南方系の種類で、わたしはこれがいたく気に入っています。肉眼どころか10倍のルーペを使っても見分けがつかない。この日Kさんから聞いたのは、ルーペはちょっといい20倍のものを使うということ。そういえばコケ初心者として最初にVixenの10倍ルーペを買ってからまったくアップデートしていなかったことに気づきました。20倍は視野が狭まるので初心者には勧められないそうですが、苔類を主にすると決めたからには入手しなければなるまい。

高ぇ!

この日教わったのがヤマトサンカクゴケ(Drepanolejeunea erecta)。小さい塊が岩場にぽそぽそと生えていました(図鑑では倒木や樹幹に生えるとあります)。F先生は他にもナガシタバヨウジョウゴケ(Cololejeunea raduliloba)とそっくりなヤマトヨウジョウゴケ(Cololejeunea japonica)もぴたりと見分けていらっしゃいました。全体の長さが1cmあるかないかの小さな特徴を見逃さないなんて、研究者はすごいなあ……。

ヤマトサンカクゴケ(Drepanolejeunea erecta)だったはず

ヤマトサンカクゴケ(Drepanolejeunea erecta)だったはず

三角と言われれば三角かな……?

三角と言われれば三角かな……?

今回の個人的目玉は小さい蘚類として有名(?)なキュウシュウホウオウゴケ(Fissidens closteri)とユウレイホウオウゴケ(Fissidens protonemaecola)。幽霊のようなホウオウゴケっていったいどんな小ささなんだ、と思ったら実物は本当に小さい。葉の形は見分けられないほどで、胞子体が伸びているからかろうじて分かる。外見だけだと短い蒴はキュウシュウホウオウゴケ、蒴が長いとユウレイホウオウゴケと分けられそうだけど、つくりは大分ちがうらしい。自分一人では探すきっかけさえ見つけられなかっただろうから、こんなすてきな出会いのある観察会には今後も定期的に参加していきたいと思った。

キュウシュウホウオウゴケ(Fissidens closteri)

キュウシュウホウオウゴケ(Fissidens closteri)

ユウレイホウオウゴケ

ユウレイホウオウゴケ

観察会の時は必ず写真を撮るとともに、何時何分に何を見たかをメモしておきます。写真の方は自動的に時刻を記録するので、名前を忘れてしまっても合わせて見れば思い出せる仕組み。参加者の中にはカメラの録音機能を使い、声に出して記録する方もいました(オリンパスのTG-4やTG-5なら可能)。

熱心な人や詳しい人の近くにいると、自分もがんばらないとと励みになります。仕事が終わってから毎日顕微鏡をのぞいているという話を聞き、真似できないまでも自分でもやれることを少しずつ積み重ねて、一つでも多くのコケを見分けて特徴を知りたい。それが何の役に立つのだと問われたら、それは問いの方が悪い。知りたいということに理由なんてありません。おもしろいから知りたい、それだけの理由で細々と続けていこうと決意を新たにしました。

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