苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

Bryophytes

国会図書館でHikobiaを見てきた

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Hikobiaは広島大学が年刊で発行している雑誌で、植物学の論文が掲載されている。コケの論文が頻繁に掲載されているのは検索して知っていたけど、まずは中身を見てみないと手元に置くかどうかは分からないので、国会図書館で実物を見てきた。

新しいものから7冊頼んでみた。すると、コケの論文はすべて英語……。
それでもコピーして読んでみようと思ったのは、最新号に掲載されていた「Spatial analysis of radiocesium concentrations in Hyophila propagulifera (Pottiaceae, Bryophyta) within 50 km of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant」(福島第一原子力発電所50km圏内におけるハマキゴケ(センボンゴケ科,セン類)に蓄積された放射性セシウムの空間的解析)がおもしろそうだったから。おもしろそうというと語弊を招くけれども、たった3年でもおもしろくて取り組んでいるコケが、原発の放射能によってどのような影響があったのか単純に知りたいと思った。さらに、先日いただいた湯澤陽一『福島県苔類誌』のあとがきに記されていた一節が忘れられないから。

除染を山林にまで範囲を広げ、木戸川渓谷の遊歩道周辺の山林除染が始まったと言うのである。問題はその除染の方法である。(中略)除染が始まるや、遊歩道周辺の苔相から草本相まではぎ取られているというのだ。

福島県は東の低地から西の亜高山帯まで幅広い植物相が広がり、東北には珍しい南方系のカビゴケなどもいるが、そのような珍しさなどは関係なく除染によってはぎ取られ放射性廃棄物として処分されてしまったという。これまで人生の大部分をかけて調べてきたこと、福島県にしかない自然が人間の過ちによって勝手に「毒」として処理されてしまうとは、著者の悔しさはいくばかりだろう。

『福島県苔類誌』は希望者には無料で送付いただけるが、とんでもなくしっかりした装丁かつオールカラーで、数千円はくだらない代物だ。しかしこの労作も原発事故の除染によって人為的に処理されたコケの範囲までは記載されていない。原発事故の前のコケの生息域を記録したもので、記載された内容の一部は永遠に失われてしまった。

福島県苔類誌

福島県苔類誌

東京に暮らして福島県や他県の電力を分けてもらって生きている身であり、コケを好きと自称するのだから、この論文はGoogle翻訳を使ってでも読んでおかなければいけない。具体的な貢献は何も出来ないのだから、せめて知ることは怠りたくない。

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