苔をたずねて三千里

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仕事さぼってでも行くべき 練馬区立美術館「芳年ー激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」

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練馬区に訪れたのは2,3回しかなくて、おそるおそる電車に乗った(練馬駅の乗換が分かりづらい)。最寄り駅はまずは近くの古本屋を、と、古書クマゴロウさんへ。右手に立派な新書の棚、左手には文学や哲学・歴史が充実しているんだけど、今は脳みそがシモーヌ・ヴェイユモードなので文学には触れず。みすず・大学出版会棚の足下に大きな本塊ができていて詳細に見られなかったのが残念なのでまたおうかがいするつもり。

古書クマゴロウから練馬区立美術館までは歩いてすぐ。芳年ー激動の時代を生きた鬼才浮世絵師は気になっていたけれども、この夏の猛暑に阻まれていたのをようやく。芳年といえば血まみれの作品が目立ち、学生時代はそこから丸尾末広につながってBloodyな青春をおくっていたことも今ではすっかり忘れていた。最近軒並み処分してしまった蔵書のうち、学生時代に買った『芳年―狂懐の神々』は未だに残っている。すばらしい書き手が揃っていて、平成元年に出たこの本はバブルで終わった昭和の芸術観が一望できる。もっとも、芳年本人のことを書いていない人もちらほらいるので、芸術書としては変わり種だと思います。

ふつうだと展示品一覧は紙で配るほかにWebサイトにもPDFが掲載されているものですが、区立美術館ということでそこまで配慮されていないようす……。うう、リストもらってくればよかった。かわいい土蜘蛛に代表される怪物系はそれほどなく、歌舞伎絵を中心に偉人関連が多い印象でした。蒲生貞秀臣土岐元貞甲州猪鼻山魔王投倒ノ図のように、絢爛豪華かつ変わった構図なのが躍動感につながっているように思います。

血まみれゾーンはお子様に配慮して別の小部屋になっていますが、そここそ人がゆっくりじっくり見るスペース。今ではSMと片付けられそうな発禁処分を受けた妊婦逆さ吊りも、元は山姥の話があってのもの。すべてが物語につながっていて、そこから逸脱せざるを得なかった芳年の想像力と画力を堪能できます。

最後の部屋で見た「月百姿」シリーズのうち、「夕顔」は源氏物語を主題にしているのですが、描かれている人物は不健康そうな六条御息所で、夕顔は植物しか描かれていない。秋のはじまりを思い起こさせる薄衣と白い夕顔が対比されて、儚さと情念が同居していてすごい。またタイトルは失念したのですが、揺れる水面に描かれた月は光でしかなく、月の形をとどめていません。それでも夜、月だと分かる。「百姿」という題はこけおどしではないと嘆息するばかりです。

浮世絵なのでどうしてもサイズは小さい。平日午後でもそれなりに人がいるので、休みだとゆっくり細かいところまで見る余裕はないかも。家紋や背景の花鳥風月までじっくりゆっくり見届けたい展覧会でした。

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