第57回の報告でありますが、まず最初に第56回トマス・ピンチョン『V.』読書会の報告が抜けていることを謹んでお詫び申し上げます。めんどくさくてまとめておりませんすいません。「過去を書き換えていくこと」「プロフェインのからっぽさ」「後半につれておもしろくなる」などご意見いただきました。
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さて第57回『オープン・シティ』ですが、参加者は15名でなかなかの盛況でした。特に主人公のジュリアスがラストでそれまでのキャラをぶちこわされる大イベントをどう受け取るかがポイントかと思います。
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議論中はわたしもメモを取る暇がないので、参加者のご意見を紹介するだけです。
- 冒頭の「そういうわけで(原文ではand so)」でもうすでに小癪
- おしゃれなフラヌール(遊歩者小説というそうです)感あふれるテキストをどうやって読めばいいか
- 自分のことについては主観的な記憶しか語らない
- 精神科医の卵で傍観者に徹しようとしているが鼻につくキャラクター(マーラー愛好家は……)
- ジュリアスはスノッブだけど、作者が彼を通して提示したいことが見えない
- 物語に歴史を重ねる方法がうまい
- ジュリアスはスノッブだが余裕がない
- 物語ではなくて地理的な描写を楽しむことに徹する方法も
- 教養ゆえに他人の思考とか言葉でしか語れず、自分の情動を出力できない
- ラストは覚えていて何も言わないのか、本当に忘れているのか
- ジュリアスが遭遇する人はインテリ率が高い
- アメリカ社会だけでなく世界中に蔓延する弱者への差別
- ジュリアスの倫理観を棚上げにして傍観者で居続けることを(キャラクターは)目指しているがうまくいかない
ミステリなどでは「信用できない語り手」という手法がありますが、本作もそんな面を多分に持ちながら倫理的な解決しづらい問題に取り組んでいるところが(わたしは)評価できるかと思います。ジュリアスはだいぶ嫌われてたけど。
次回読書会は8月25日(土)、課題図書はTwitterにてお知らせしています。
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