苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

Bryophytes

国立科学博物館主催「しらびそ高原のコケと地衣類を見る知る楽しむ」に参加してきた

投稿日:


茨城県自然博物館の変形菌展についても書きたいのだけど、こちらから。

国立科学博物館主催の「しらびそ高原のコケと地衣類を見る知る楽しむ」に参加してきました。しらびそ高原がどこかも調べずに気軽に応募したら、飯田市の最寄り駅からタクシーで14000円もかかるとか……。この情報におそれをなしたかキャンセルも出たようで、去年の御在所岳観察会から2年続けて参加することができました。参加者の皆さんにおうかがいしたところ、毎年応募しているけど数年ぶりに参加できたという方もいて、この観察会はとても人気みたいです。

しらびそ高原までは電車orバス+主要駅からレンタカーというのが現実的ですが、わたしは経費節約のために家の近くからレンタカーで行くことにしました。片道5時間。

しらびそ高原初日は曇り

しらびそ高原初日は曇り

蘚苔類は樋口先生、地衣類は大村先生による講義を聞きながら、初日は宿泊先のハイランドしらびそ近くを巡り、まずは整地された場所のウマスギゴケ(Polytrichum commune)。学名のPolytrichumとは「たくさん毛がある」という意味だそうで、蒴にかぶさっている帽はふさふさの毛でできています。また、ウマスギゴケの「ウマ」はおいしいという意味(ウマスギ!)ではなく、成熟すると上を向いていた蒴が横向きになり馬の顔に見立てたもののようです。まだ馬感のある蒴はなく、ほとんどが帽をかぶっておりました。

ウマスギゴケ

ウマスギゴケ

地衣類のはじめはヒメジョウゴゴケ。低地でもよくある種類で、ウマスギゴケと共に生えています。特徴を図解してもらえるのでありがたいのですが、地衣類特有の「顆粒」「粉芽(ふんが)」「裂芽」などを見分けるのが難しい! 化学物質を使わないと見分けられないものもある(台所の「ハイター」なども使うとか)のもハードルの高さですが、先生は「全てを見分けようと思わずに、代表的な種類をまずはおさえる」のが肝心とおっしゃっていました。

ヒメジョウゴゴケ

ヒメジョウゴゴケ

ヒメジョウゴゴケの解説

ヒメジョウゴゴケの解説

初日は明るく開けた場所なので、蘚苔類は

  • ネジクチゴケ
  • コメバキヌゴケ(蒴が下向きなのでこぼれないように蒴歯が複雑)
  • ヤマハリガネゴケ(ヤノウエノアカゴケのように蒴柄が赤い)
  • カラフトキンモウゴケ
  • エゾスナゴケ(分枝しない)
  • コバノスナゴケ(分枝する)
  • ミヤマスギゴケ(蒴が円柱、葉は乾燥しても縮れない)

のように乾いた場所でも元気な種類がほとんど。地衣類はサルオガセの仲間が40種類もいるというのに驚き、しかも多少引っ張るくらいではちぎれずゴムのように伸縮するというのがおもしろかったです。サルオガセのように立体だと興味が出るんですけどね……。

地衣類のホネキノリとハリガネキノリの仲間

地衣類のホネキノリとハリガネキノリの仲間

2日目はいよいよ山の中へ。コメツガなどの亜高山性針葉樹林なので、足下の蘚苔類も亜高山帯に生える種類が増え、タチハイゴケやイワダレゴケが増えてくる。山を登っていると明らかに「いま植生が変わった」という瞬間に立ち会えることにちょっと感動します。この感動はコケの植生分布が分かっているから得られる感動で、大きな樹木についてわたしはほとんど知らないので同じほどの感動はありません。コケについて学んだから得られる感動なのだと思います。感動を得るには何かを学ばないといけないし、逆に学び続けることが感動を増やす。当然のようなことですが、コケを見ていなかったらいつか忘れてしまうようなことも思い出したりします。

亜高山帯を代表するタチハイゴケ

亜高山帯を代表するタチハイゴケ

地衣類の大村先生の話を熱心に聞く

地衣類の大村先生の話を熱心に聞く

ここからは苔類祭りだっ。まずはケシゲリゴケ(Nipponolejeunea pilifera)。学名の通り日本で最初に見つかったようで、この近くにある地衣類も「Nippon〜」という名前で、同じような場所に同じような名前のコケと地衣類があるのだとか。「繁り」というほど毛があるわけではなく、細い透明な毛が1つの葉に1〜4本程度生える。

ケシゲリゴケ(背面)

ケシゲリゴケ(背面)

ケシゲリゴケ腹面

ケシゲリゴケ腹面

この苔類は富士山三合目付近でも見て、その時は葉先に無性芽がついていることからタカネイチョウゴケ(Lophozia silvicoloides)かフォーリーイチョウゴケ(Laphozia longiflora)かと思ったのですが、今回見つけてみるととても小さい。茎が1cmと図鑑にあるけど、そこまで大きいかな……? 見つけたときに「もっとたくさんいるだろう」と1枚しか撮らなかったら、その後一切遭遇せず。

タカネイチョウゴケ属?

タカネイチョウゴケ属?

こちらはたぶんウニバヒシャクゴケ(Scapania ciliata)。よく見ると葉の裏側に黒い点があり、これが無性芽。しかし、ヒシャクゴケの仲間は特徴が似ていて分かりにくい……。先生からはキヒシャクゴケ(Scapania bolanderi)を教えていただきました。

ウニバヒシャクゴケ?

ウニバヒシャクゴケ?

キヒシャクゴケ

キヒシャクゴケ

今回の個人的目玉、こちらも富士山以来2年ぶりのイボカタウロコゴケ(Mylia verrucosa)! ラジエーターと称された葉のうねりと密接ぶりがたまりません。今回はちゃんと花被のイボも撮影できてほくほく。

イボカタウロコゴケ

イボカタウロコゴケ

イボカタウロコゴケのイボ

蘚類は……、ヨツバゴケ(Tetraphis pellucida)の蒴と雄のカップを見つけました。

ヨツバゴケの雄

ヨツバゴケの雄

ヨツバゴケの雌

亜高山帯と言えばエゾチョウチンゴケ(Trachycystis flagellaris)。宇宙からの電波を受信しそうな無性芽も健在です。

エゾチョウチンゴケ

エゾチョウチンゴケ

いつもゴージャスなフジノマンネングサ(Pleuroziopsis ruthenica)。現地で見るとコウヤノマンネングサ(Climacium japonicum)との違いは一目瞭然なのですが、写真にするとあまり太さや大きさのちがいが伝わりにくい。平凡社図鑑によるとフジノマンネングサはムツデチョウチンゴケなどのように蒴を複数つけるそうなので、一度は見てみたいものです。

フジノマンネングサ

フジノマンネングサ

地衣類もたくさん教えていただいたのですが、なんといっても一番目立つこちらのサンゴゴケ(タイワンサンゴゴケ)。ブラックライトで紫外線を当てると青く光るのです! かなり濃く光り不思議な印象。

青に変わるサンゴゴケ

青に変わるサンゴゴケ

標高の高いところは適度な湿度がありますが、川や池、湿原のような水が溜まる場所はありませんでした。しらびそ高原の途中にはいくつも川があり、場所によっては石灰岩や蛇紋岩のような変わった地質もあるそうです。コケにとっては絶好の環境なので、ちょっと遠いですがまたいつか訪れてみたい。大変快適な観察会でした。

南アルプスの山々

2日目は南アルプスの山々がくっきり

ad02

ad01




ad02

ad01




-Bryophytes
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


関連記事

苔観察日記 武蔵五日市駅〜広徳寺〜金剛の滝

苔湯酒活動とは、山に登って苔を見て、下山したら風呂に浸かり酒を飲む活動のことである。今回は、苔の研究をされている上野先生が主催されている「苔をみる旅」に同行させてもらった。JR五日市線に集合し、夕方ま …

苔観察日記 子の権現

苔の中には石灰岩を好む種がいる。一般的な植物は石灰岩を好まない(栄養が足りないらしい)が、逆に植物にとっての栄養がじゃまになる苔が石灰岩の地域に適応したということなんだろうか。石灰岩といえば秩父。セメ …

苔の学名を調べることがこんなにおもしろいとは

学生の頃に外国語をきちんとやっておけば、と後悔しなかった人などほとんどいないだろう。わたしもその一人。英語すらままならないのに、苔をはじめとした学名はラテン語だという。ラテン語。日本舞踊とかフォークリ …

苔観察:真夏の高尾山は案外空いている?

夏の高尾山はビアガーデンが大混雑という話を聞いていたので、午前中に6号路を登り、山頂では敢えて吞まずにビアガーデンに並んで喉の渇きにじっと耐える。いよいよ開店となって飲み干す一杯のおいしさときたら…… …

「日立中央研究所 秋の庭園公開」に行ってきました

日立 ロボット掃除機 ミニマル RV-DX1 N 日立中央研究所はJR中央線の国分寺駅から徒歩5分程度。春と秋の年に2回ほど、研究所内の庭園が公開されるのだそうです。研究所は外から見ると雑木林にしか見 …