苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

book

若い人と年輩の人が出会って生まれる火花:『女子学生、渡辺京二に会いに行く』

投稿日:


言われてみれば石牟礼道子に関係して名前を見たことがあったかな、くらいの認識だった著者。手に取ったのは荻原魚雷『書生の処世』(本のチョイスがわたしの見落としているものばかりでよかった)がきっかけでずいぶんほめているし、著者と女子学生はだいぶ年の差がある。むかしは長老に教えを請うというスタイルがあったけれども、現代は家族の形が変わったこともあり年の差はそのまま断絶の深さになっているように思う。渡辺京二は1930年生まれで、発売当時71歳。どんな話になるんだろう。

女子学生たちは「看護師や介護士の給料が低い理由」や「帰国子女が失ったもの」など、わたしの世代から見てもあまり話題にならなかったことを研究している。それはわたしたちの偏見があるからで、インターネットが生まれた頃から使える世代は過去の知識の蓄積を得る機会が少ない代わりに、インターネットで偏りのない情報を入手することができるのかもしれない。わたしは自律神経失調症という病を大学を卒業する頃になってようやく耳にして、もしかしたら自分もそうだったのかも、と振り返るくらい。発達障害やアスペルガー症候群という言葉はまだなかった。そういうことを医療現場で働くわけでもないのに研究するお茶の水女子大の学生たちは、わたしなんかよりずっと進んだ考え方なのだなあと思う。

一方で研究はしても生活はまた別の話で、いい会社に入っても社会に出たばかりで迷いがあり、吹っ切れてしまうには頭が良すぎるように見えた。でも、そういう気持ちとそこからの視点は年を取っても持ち続けたいですよね。社会にゲーゴーするのはいつだってできるけど、自分が気づいた視点は忙しさにかまけてなくしてしまうことも多い。そんなことがないように、若い人は渡辺京二のような賢者に会う機会があればいいのに。本一冊で終わってしまうなんてもったいない。

渡辺京二は大連で育ち日本と少し相容れないところがあるという話はおもしろく、個人的には「じめじめしているから苔は嫌い」という話にびっくり。それが大陸的と言われればそれまでだけど……。

ad02

ad01




ad02

ad01




-book

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


関連記事

no image

購入

早島鏡正『歎異抄を読む』(講談社学術文庫) amazon 楽天 ベルナール・ブラン編『現代フランス幽霊譚』(白水社) amazon 『歎異抄を読む』は某練習のために。仏教用語にルビがふってあるので、わ …

第28回読書部 ウラジーミル・ソローキン『青い脂』

『青い脂』の読書会なんて下品な課題図書ではたしてどれだけの人が集まるやら、という気苦労は杞憂に終わり、募集から1週間もせずに10名以上の参加表明があり、驚くやらうれしいやら。高田馬場にあるルノワール系 …

族長の秋

ガルシア=マルケス『族長の秋』構成 第1章

ガルシア=マルケスは元々そうだが、『族長の秋』は特にエピソードが豊富すぎて物語がどうつながっているのかわからなくなるので、各ページに何が書かれているかざっと書き出してみる。読書会までに全て終わるかどう …

no image

国枝史郎『血煙天明陣(上・下)』

もう一昔前になってしまうだろうか、中二病という言葉が流行した。 ある価値観を経験した視点から蔑む時につけられる状態、とわたしは理解しているが、子供らしい自由な価値観を否定する言葉だと思う。 大げさな名 …

no image

購入した本

・スティーブン・ミルハウザー『バーナム博物館』(福武書店) ・マルグリット・ユルスナール『黒の過程』(白水社) amazon 楽天 ・ジャック・ロンドン『火を熾す』(スイッチ・パブリッシング) ama …