苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

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断捨離、自炊、本との別離

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本が好きという人もいろいろだ。わたしの周囲には数千冊から数万冊所持している人が複数いるので勘違いしてしまい、本を読むためにはまず本を所有しなければならない、それも余るくらいに、という信念が若い頃にはあった。本棚2竿に加えて床や押し入れにしまった本がたくさんあった時代……。うずたかく積もり一度も開かれずに売られていった本が何冊あったことか。洗脳が解けたのは世間一般で流行った断捨離のおかげです。あれがなかったらまだまだたくさんの本を所有していただろう。一緒に暮らした猫が死んだこともあり、前の家を引き払うときに思い切って蔵書を半分以下に減らしました。SFや新書は軒並み処分して、ハードカバーの海外文学も簡単に入手できるベストセラー系は処分。本当に手に入らない本だけを残すという基準を作ったものの、結局500冊くらいは残っているかも。特にもう読まないであろうサンリオSF文庫が、今後入手するのが難しそうという理由だけでとってあり、ここ5年くらい一冊も読んでいない……。

処分するのに迷ったのは、読んで付箋をたくさん貼ったもの。小さい付箋を見返しに複数枚貼り付けておき、気になったところは書き込んだりせずに付箋を貼ることにしているのですが、いざ剥がそうとするとこれが実にめんどくさい。特にページの内側などはちょっとした拍子に破いてしまったりして、本自体を損ねてしまったこともあります。しかし、この付箋があることで自分がこの本を読んだことが分かります。なぜなら、読んでいない本には付箋が付いておらず、読んだ本でも中身を忘れていることが往々にしてありますが付箋があることで自分が読んだという事実だけは残るのです。付箋が紙によくないことは承知していますが、我が家にある本で歴史的に貴重なものはそれほどないはずなので。それに付箋を貼ってまで楽しく読んだ本を処分する、ということも罪悪感があった。

使う付箋はこの「スリム見出しミニ」だけ。本文を隠さず、かつ折れても見苦しくならない。

去年は引っ越した勢いと送料無料につられて、初めての自炊をやってみました。本の背をカットしてスキャナーで読み込みPDF化する作業を「自炊」と呼んだ時代がありました。今ではすっかり廃れてしまいましたが、ちょっと昔の漫画(『動物のお医者さん』とか)などまだまだ電子化されていない本も多いので、自炊はもっと気軽にできた方が本を好きになる人も増えると思うのだけど、業界的には自分たちが出した紙の本を勝手に電子化されることはまかり成らん、という認識のようです。それはともかく、自炊によってかさばる漫画などはすっきりして、押し入れにしまい込むことがないので気軽に読めるようになりました。これって紙の本とは別離していますが、中身とは親密になっているので、別離と言っていいのかどうか。

本を読むことは自分の知力に直結しているという気持ち、コンプレックスがわたしには強い。学生の時に本が読めなくなったことがあって、今なら自律神経失調症とか何らかの病名がつくのかもしれないが、実家には戻れないという強迫観念や学業がうまくいかないという不安が重なったことが原因だと思う。他人の気持ちを考えることなんて全くできず、自分本位の生き方しかできなかった。気に入らないことには強く怒りを表明して後輩など相手を萎縮させることもしばしば。そういうのがなくなったのは働き始めてお金を自分の力で得るようになったことはもちろん、SFや海外文学のおもしろさに目覚めて同好の士に出会えたことが大きい。自分よりも頭のいい人が身近にいると自然と相手より上位に立とうという気持ちがなくなる。

とりとめないことを書きましたが、本を読まないとばかになるという恐怖心が今の読書量を支えている一因であることはまちがいなく、本を手放すことは自分の知力を捨てることに繋がるような気がしたのです。しかしいい年をとった今では本だけが知力でないことを分かっています。一方で本を読まないことで機会を損失することも多々あると実感しています。自分にとって必要な本を見極めること、それは年齢や環境が大きく関わってくることが分かっただけでも、ここ数年の成長かもしれません。
本を読まないと自分がばかになる、という恐怖心についてはもうちょっと書いてみたいけど、また今度。

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