苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

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詩は読めないけど持ち続ける

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#あなたの本棚のあいうえお」タグを見て我が家はどうかなと本棚の前に行くと、辻征夫が眼に入った。『かぜのひきかた』『河口眺望』『かんたんな混沌』と、「か」から始まる本ばかり。『鶯─こどもとさむらいの16篇』は買わずじまいだったなあと思い出しながら何気なくめくりはじめた。

大学生当時、今から考えると精神的におかしくなっていて、喧嘩ぱやいし将来のことを何も考えられなくて授業にもほとんど出られなかった。何より高校時代まで1日数冊くらいの速度で本を読めていたのに、さっぱり読めなくなったことは、学生として致命的だった。橋本治やら宮本輝やら売れ筋の本を図書館でさくさくと読んでいった自分はどこに行ったのだろうと途方に暮れ、麻雀に耽溺していくのである。

高校時代から詩は苦手だった。宮沢賢治『春と修羅』ランボーの詩集を手にとってみたものの、何が描かれているのかさっぱり理解できず、とはいえ投げ出してしまうのもいやで、嫌いなのに所有し続けていた(高校時代の倍くらい生き延びてしまったが未だに理解できないと思う)。進学しても詩に苦手意識は持ち続けていたが、池袋の今は亡きぽえむ・ぱろうるで偶然手に取ったのが辻征夫『かぜのひきかた』だった。後になれば随分有名になった詩だけれども「こころがうすくとおくたなびいて」あたりには、美しさと共感を素直に感じたものです。それを恩というのか、未だに当時買った辻征夫の本は処分していないし、死ぬまで本棚のいい所を確保し続けることでしょう。

詩に凭りかかることができるようになったのは、それでもここ数年で、詩なんて基本的にさっぱり理解できないまま過ごしてきてしまった(専攻は現代詩だったのに!)。今でも詩が分かる、短歌が分かるなんてとうてい言えないけれども、詩はそうやって分からないまま寄り添って過ごしていくようなものと割り切るようになってきた。特に古今集から新古今集にかけて似たような景色やありふれた喜怒哀楽を、言葉を彫託して歌にするという行為を眺めていると、それぞれの言葉に背景があって約束ごとを知るたびに少しずつ風景や感情が浮かび上がってくる。言葉を言い切らずに読む人に任せるというか、受け取る人の経験に委ねる言葉の連なりがあっていいのだという肯定感が、正しさで窮屈になってしまう身に涼しい風を送り込んでくれるようだ。いろいろ諦めてきた人生だったけど、本を読むことだけは諦めなかった。その1点だけで人生悪くなかったんじゃないかと思うし、偶然ぽえむ・ぱろうるに立ち寄って偶然辻征夫を手に取ったところで、わたしの人生は決まっていたのかもしれません。

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