苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

Bryophytes

苔観察日記:高尾某所

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3月も中旬に入ろうとするともう低山ではダウンジャケットは不要なのですが、ことコケに関してはまだまだ必要な場合もある。観察スポットまでは坂がきつくて汗ばむくらいに運動するのだけど、いざ着いてしまうと一箇所にじっととどまるのでどんどん汗が冷えて寒くなってくる。冬が終わるというのに風邪などひいてはかなわないということで、ダウンさえ着ておけば大丈夫だろうと安直な考えになりがちです。しかし3月中旬に厚手のダウンはちょっとやり過ぎでした。もう薄手のダウンでまかなえてしまう季節になったのだと感慨深いものです。

途中は舗装されていても両脇がコケだらけ

途中は舗装されていても両脇がコケだらけ

高尾駅からバスにゆられ、陣馬山へ向かう人々を見送って某バス停で下車。ここから歩いて今日の目的地までは30分ほど。怪しい民家や工事中の場所をくぐり抜けてたどり着いた山道は、登山の方々には見向きもされない場所でこの日も誰一人通りませんでした。それもそのはず、途中で山道は途切れていて、登ろうとするとすごい急勾配を杉の木につかまって道なき道をよじ登る羽目になるのです。杉の木にはホソバオキナゴケくらいしか見当たらないので、頂上を目指すのはやめました。

某山道

某山道

3月・4月はコケの胞子体が一斉に伸び出す季節。中でも苔類は蘚類と異なり胞子体が伸びて胞子を発散するとすぐに胞子体がなくなってしまいます。蘚類の蒴・蒴柄は1ヵ月くらい平気で残っているものですが、苔類はタイミングが命。去年はぐずぐずして全然見られなかったので、今年はカレンダーに予定をぎっしり詰め込んで、苔類の蒴を見るのがテーマです。

ミョウガのような花被

ミョウガのような花被

コケの中でも苔類は「花被」ができるものが多く、ここからさらに白い胞子体が伸びてきて先端の蒴が弾けて胞子を飛ばします。これはヤバネゴケの仲間(オタルヤバネゴケ? Chephalozia otaruensis)で、実物はとても小さく見分けるのが難しい。葉に比べて花被がアンバランスに大きくなるのも苔類のおもしろいところで、不思議な造形にただ感嘆するばかりです。

フソウツキヌキゴケ(Calypogeia japonica)?

フソウツキヌキゴケ(Calypogeia japonica)?

枝の途中から蒴のようなものが!

普通の苔類は枝の端、頂点から蒴を出しますが、こちらは枝の途中から出るタイプ。素人考えだと頂点から胞子を拡散した方が遠くまで飛びそうに思うのですが、彼女らなりの生存戦略があって途中から胞子を出すように進化してきたのでしょう。緑の真珠のような粒がきれい。

チヂミカヤゴケの蒴

チヂミカヤゴケの蒴

日当たりの良い樹幹を好むチヂミカヤゴケは、直射日光を浴びて一足先に胞子拡散状態。赤みがかった蒴が割れて、小さい緑色の胞子が見えます。これが見たかった!

3〜4月の花が開く時期は、花をつけないコケも胞子体を精一杯に伸ばして、生息範囲を拡大すべく大忙しです。全体で小指の爪にも満たないくらいの小さな植物も、光と温度を察して変化している様にはただ感心するばかり。苔類の胞子体はすぐに朽ちてしまうので、たくさん山に通わなければならず、こちらも大忙しです。

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