2018年最初のコケ観察はすごい人たちと

Bryophytes
奥多摩コケ観察

とあるコケ専門家の研究観察に同行させていただく機会をいただいきました。観察会などで遠巻きに見つめることしかできない先生方とお近づきになれる一方で、わたしのような未熟者が話しかけていいのか……、観察中もずっと逡巡し通しの一日になってしまったのが今でも悔やまれます。

車に乗せていただき、一路鍾乳洞を目指す。今回の研究は石灰岩の未発見のコケを探すのだそう。奥多摩はまだ雪が残っていてなんども転びそうになった。

わたしがこれまで石灰岩と思ってきた岩石は、実は白チャートだということを教えてもらいました。本当の石灰岩は柔らかくて削ると粉が出てくる。校庭の白線を引くような石ですもの、堅いはずがない。石灰岩を好む植物はほとんどいなくて、コケの一部くらいしか生えないのだそう。地衣類さえ生えないようで、そんなところでもコケが生きられるのは(ちゃんと聞けたわけではないけど)石灰岩が粉になって苔の植物体にまぶされても、水分と光を吸収できればOKという性質ゆえなのだとか。コケを見るためには地質にも通じなければならないのです! ちなみに各地の地質は産業技術総合研究所の地質NaviでGoogle Mapと同じように調べることができます。

鍾乳洞は石灰岩でできている

実際の石灰岩にはリボンゴケ(Neckeropsis nitidula)などが多かった。よく見る場所だと密集しているようなコケなのに、石灰岩には1本くらいずつ孤立して生えている。なのに蒴をつけていたりするから侮れない。

リボンゴケの胞子体

石灰岩にしか生えない変わり者のコケもいて、一方的に感情移入したりもしました。ニセイシバイゴケ。地衣類を思わせる白みがかった灰緑色をしているのは、石灰岩が水で溶けてコケにまとわりついているため。ふつうの植物は生きていけない場所をわざわざ選んで何万年と生きてきたのだろうと思うと、鍛え上げられた職人の技を見るようで、ただただ畏敬の念しかありません。コケに畏敬の念。そうそう、「イシバイ」とは石灰(いしばい)のことだそうです。つまりイシバイゴケという別のコケもいるのです。

ニセイシバイゴケ(Tuerckheimia svihlae)

やはり教えていただいて初めて見わけられたサンカクキヌシッポゴケ(Seligeria austriaca)も石灰岩にしかいない種。それを目印にすれば石灰岩が分かるなんて便利だなあと思ったけど現実はそんなに甘くない。キヌシッポゴケの仲間はとても小さくて肉眼ではまず見えない。むしろ石灰岩だろうなというところを探すとサンカクキヌシッポゴケがいるかもしれない、と目印としては逆の扱いになってしまう。コケを探すというのは改めて難しいものだと思い知らされました。ちなみにサンカクキヌシッポゴケは絶滅危惧種I類です! I類を見たのは初めてかもしれない……。

この石灰岩中央、白っぽいところのやや左

サンカクキヌシッポゴケ

サンカクキヌシッポゴケ

当然なのだけど、先生と同行すると知らない苔を教えてもらえるというのが最大のメリット。一方で今回は観察会ではないので、なるべく邪魔にならないように小さくなっていたい。聞きたいけど聞ける基準になっていない自分の知識の至らなさを痛感した一日でした。なんせナミガタタチゴケというかなりメジャーな種ですらわたしの認識はまちがっていて、実はヤクシマタチゴケという別の種だったということも。「ヤクシマ」と名前に着いたら南方系で関東近辺にはいないのでは、という思い込みは全くの誤りなのです。

このイクビゴケも奥多摩にはよく見かける種類と思ったら、「岩に生えているしこれはミギワイクビゴケのよう」だとか(ミギワイクビゴケについては左木山さんのところでも検討されています)。何度も訪れて何度も見ているのに初めて聞く名前! 

ミギワイクビゴケ(ちょっとピンぼけ)

詳しい人の話を聞くことによって知識が広がることはもちろんですが、コケへの愛情・好奇心も一層磨かれます。今年もたくさんコケを見ようと改めてしみじみした一日でした。

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