苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

book

2017年12月に読んだ本

投稿日:


12月はなんだかんだで忙しく、冊数は少なめ。でも、去年1年でみると目標の100冊にはマンガなどを含めてなんとか到達したのでよしとしたい。

でも、本を読んで何になるんだというのはふとした拍子に思う。数の問題ではなく、よい本に出会えたかどうか、そこから自分が何を引き出せて何を自分のものにしたかが大切なのです。数を読むことで読書力の経験値も上がるから悪いことではないはずなんだけど、ふとした虚しさばかりはどうしようもない。

12月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1418
ナイス数:118

聖ヨハネ病院にて (新潮文庫)聖ヨハネ病院にて (新潮文庫)感想
露悪的な私小説は苦手。でも上林暁の小説は私小説でありながら僅かな客観性と笑いを含んでいるところが好き。本作は妻が貧しさなどの環境故に精神病院に入ってしまうことになるので、著者の作品の中では最も露悪的と言えるかも。寝ていると四国に遠く離れて暮らす長男の寝小便の音がじょじょじょと聞こえる「小便小僧」などはこのテーマに固執しなければマジックリアリズムの趣さえある、侘しさの塊。まあ、ろくに働いていないダメ人間と言えばそれまでなのだけど、それでもこの小説群が好きだと言わせる優しさと哀しさと無力感の描写がいいのです。
読了日:12月24日 著者:上林 暁
大霊界の真実―この真実を知ればもう死は恐くない! (カドカワブックス)大霊界の真実―この真実を知ればもう死は恐くない! (カドカワブックス)感想
おれたちは霊人になるために徳を積まねばならないから、この真実を読まなければいけない。脳死は死ではない、幽体離脱を伴って初めて死と認めるべきという新説、誰が判定すんねん。最初の霊界はイージーだけど、次の酒池肉林霊界では自分の欲を全て捨てきってないと人間界に返されてしまうそうなので、現世に思い残しがある方は第二の霊界で酒池肉林に溺れてください。ケネディ暗殺直後に生まれたドイツ人がホワイトハウスの中身を全て知っていて、ジャクリーヌとのプライベートをも言いつのった話が趣深く、わたしも大霊界に行ける様精進します。
読了日:12月23日 著者:丹波 哲郎
モモ (岩波少年文庫(127))モモ (岩波少年文庫(127))感想
幼少時からこんなすてきな本を読んできた人に読書レベルでかなうはずがない。効率を追い求めている平成の日本人は灰色紳士たちに時間を預けてしまったのかもね。大人も夢中になれる名作というか、大人ほど忘れてしまった豊かな時間を取り戻すために読むべき。
読了日:12月20日 著者:ミヒャエル・エンデ
至福の烙印 (エクス・リブリス)至福の烙印 (エクス・リブリス)感想
モノクロ油絵の挿絵はゼーバルト、文体はクレストブックスぽさを一見感じさせるけれども、静かで静謐ではない現実を隠して、古いモノクロ写真集を眺めているような、語られない背景を隠した物語。感情的な言葉がほとんど使われないのは、語り手の周囲が障害者や重篤な病人だったりして、世界を恨む言葉も持たないのかもしれない。P.197をはじめとした野心的かつ丁寧な翻訳も特筆すべき。「詩的」と一言で片付けられない世界の広がりを体験できる希有な一冊です。
読了日:12月10日 著者:クラウス・メルツ
拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1)拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1)感想
『ジーザス・サン』『世界の涯てまで犬たちと』に連なるダメ人間傑作選。いろいろやってみるんだけどぼんくらだから失敗しちゃうんだけど、努力の方向が憎めない。本当に好きなんです、こういう話。特に序盤のベトナム戦争を舞台にした話がひどいんだけど、全員なにかしら癖があって、どれもみな愛せてしまう。周囲にいたら絶対いやだけど小説に出てくると嫌いになれない。これは上記2冊とともに死ぬまで愛読していきたい。
読了日:12月03日 著者:トム・ジョーンズ

読書メーター

ad02

ad01




ad02

ad01




-book

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


関連記事

no image

『プラトーノフ作品集』「粘土砂漠」

ソローキン『青い脂』読書会の日、ソローキンの読書会だというのにすっかりプラトーノフ『土台穴』にはまっていて、集団化のばかばかしい恐ろしさについて熱くなったりした。打ち上げに行く途中の古本屋で岩波文庫か …

no image

5月に読んだ本はなんといっても『オルフェウスの窓』!

ユリウス……。一途すぎるところがちょっと浪花節だけどそこもまたいい。 5月の読書メーター読んだ本の数:12読んだページ数:3862ナイス数:66 ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)の感想人の意識が …

no image

ジーン・ウルフ『ピース』人物相関図その2

今回は2章「オリヴィア」だ。前よりちょっと上手にできたような気がする。 Peace02Olivia ブルーストッキングは日本語に訳すと「青鞜」! らいてう先生! おいおい、『ピース』の謎や物語の構造に …

リャマサーレス講演会

昨日はセルバンテス文化センターでブックフェアに合わせて来日したスペイン人作家の講演会があったのだが、労働のためキャンセル。今日こそはと勇んでいざ会場へ。すると、海が見える廊下に人だかりができている。カ …

no image

ナボコフ『賜物』第1章

池澤夏樹編集の海外文学全集は、これを出したことに最大の意義があったと思う。それまで文庫版がしばらく品切れで相当な高値をつけ、いたずらにナボコフへのハードルをあげてきた戦犯の一冊だ。ナボコフは実際に読ん …