苔をたずねて三千里

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第55回読書部活動ハサン・ブラーシム『死体展覧会』(白水社エクス・リブリス)

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去年は読書部の活動報告をすっかりさぼっていたので、今回の読書会が何回目か忘れてしまいましたが、たぶん55回目です。

今回の課題図書ハサン・ブラーシム『死体展覧会』はまったく素性の知れない中東の作家ということで身構えていたのですが、読み始めると残酷な描写はそれほど緻密ではないものの、日常にある死の密度というか死の近さが印象的な作品でした。短篇集ということもあり、ボルヘスやコルタサル、筒井康隆などを彷彿される方も。

参加者からのご意見は以下のようなものでした。
※ネタバレを含みますのでご注意ください。

・イスラムについてよく分からない。イスラム教に従って生き、テロなどもある地域というくらい。
・作中に「神」があまり出てこない、「神」を言い訳に使っている(現代のイスラム教の受容状況も気になります)。
・2017のベストだけど、面白かったと一言で言えない。
・本の前半は暴力、中盤はイラク、後半は移民としてヨーロッパに渡った人の話とテーマが分かれている。
・中東の現実をリアルに描き出すわけではなく、着地点も明確に記されていない。
・NHK「ねほりんぱほりん」の養子の回に感じた、ふつうのことがふつうでない人たちの声に近い。
・暴力に関する感想を書かないのでグロさが少ない。痛みや悲しみの描写が直接的ではないのもウェットさを感じない理由。
・作中で人々はひどいことをされるけれども、受難の理由がわからないのは読んでいてつらい。
などなど。

好きな作品としてあがったのは、「カルロス・フエンテスの悪夢(『指輪物語』!)」「アラビアン・ナイフ」「記録と現実」が多かった。冒頭の表題作はかなり残酷な話なので、未読の方はこの辺りから順番を変えて読んでもいいかもしれません。

関連書というか本書から連想する本として上がったのは、『ペルセポリス』、いとうせいこう『想像ラジオ』、J・G・バラード『残虐行為展覧会』などもありました。

次回読書会は3月10日(土)13時からで、課題図書はこれからTwitterの投票機能で決めます。次回はピンチョン縛りでやってみることに……。

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