苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

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読書は流れていく

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引っ越してから電車に乗る時間が長くなり、比例して読書の時間も長くなりました。乗っている時間は長くても乗り換えの回数が減ったので、読書に集中できるようになり、引越当初のもくろみが当たったと喜んでいます。引っ越し先は物を減らしたうえにしっかりした机と椅子を準備して、読書する環境としてはかなりいい自負があるのだけど、集中力という点で見るとやはり電車の中は格別。何もすることがないから本を読むしかないという気持ちになり、加えてノイズキャンセリングイヤホンで周囲の雑音を遮断することで、本を読む速度さえ上がったような気がする。

10月の選挙前からなんとはなしに憲法についての本を読んでいます。改憲(特に9条)について基本的には反対だけれども、具体的に何を論拠にして反対するべきなのか自分ひとりの脳みそでは考えきれない問題だと思ったのがきっかけ。井上達夫というかなり革新的な憲法学者の本を読んで、思えばわたしが子どもの頃は自衛隊を放棄するか憲法を改正するかの二択だったはず、と思い出したりした。その流れが変わったのは9.11であり3.11なのだろう。日本人にとって自衛隊はいつの間にかなくてはならない存在になっていた。そうなると、憲法における自衛隊のあり方はどうしてもおかしい。なので、政情によって存在意義が変わる自衛隊の位置づけを憲法から取り除き、憲法9条は削除すべきというのが井上氏の論点だ。まちがってはいないと思うが、いまそのやり方で国政選挙をやると憲法から9条を削除した上で、集団的自衛権を論拠とした海外派兵を行うのはほぼ確実だろう。日本人の多くは自分が戦争に行くとは考えておらず、自衛隊に任せきりにすればいいと対岸の火事見物なのだ。井上氏は公正な徴兵制によって国民にも義務と責任があることを実感させられるとしているが、はたしてどうか。

井上氏の著書を3冊ほど読んで、彼への反論が気になった。ひとつは憲法9条削除を反対する立場、もうひとつは集団的自衛権に賛成の立場、それぞれの論拠を知りたいと思った。しかし、それをどうやって探せばいいのか。

海外文学ならラテンアメリカ文学を読みたいならリョサとかガルシア=マルケスあたりから読めばいいとすんなり意見できるが、憲法や法哲学についての知識はさっぱりないので、井上氏につながる意見や反対する意見というのが直感的に分からない。これはインターネットの検索を通しても同じことで、どういう探し方をすればいいのか分からない。情報がないのではなく、ありすぎてどこから選べばいいのか分からないのだ。文学は作家の名前に頼って次の読書を決めることができるが、他のジャンルについては同じ著者ばかり選んでいると考えが偏ってしまいそう。曲がりなりにも書籍に関わる仕事の末端にいながら、こんなことも知らない自分にしょんぼりしました。

分かりやすい方向へ流れるのは簡単ですが、きっと本当のことはそんなに簡単じゃないし、本を1、2冊読んで体得できるようなことでもないのでしょう。自分の思想も読む本によって移り変わることがあるかと思いますが、芯のところは変わらず読書によって年輪のように太くなっていく。そんな読書の川のような流れをたゆたっていきたいと思います。

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執筆者:


  1. 奥村ペレ より:

    おおたさん、はじめまして。この国の「憲法」の歴史的成立過程とその運用と現在について、ゼヒ、矢部宏冶の『知ってはいけない』(講談社現代新書)の一読をオススメします。

    • uporeke より:

      奥村さん

      Twitterではいつも拝見しています。コメントありがとうございました!
      『知ってはいけない』は寡聞にして知りませんでした。まずは図書館で……と思ったらすごい予約数でびっくり。今の勢いを大切に早めに読んでみようと思います。

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