苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

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5月に読んだ本はなんといっても『オルフェウスの窓』!

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ユリウス……。一途すぎるところがちょっと浪花節だけどそこもまたいい。

5月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:3862
ナイス数:66

ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)感想
人の意識が輪舞のように1日という舞台の上でくるくると入れ替わる。Kindleで読んだので残りの頁が分からないものの、1日の終わりが物語の終わりと思って読むと、夜のパーティーでは感慨深いものがあります。『船出』でも描かれた医者への不信や自殺願望はここでもクラリッサ(ダロウェイ夫人)の周囲に見えないようにつきまとう。特に戦争に行ったセプティマスのPTSDは現代とほぼ変わらない描写で観察力の鋭さに感服するばかり。なるほど名作として何度も訳される価値のある、読者も何度でも読み返すことのできる古典です。
読了日:05月28日 著者:バージニア ウルフ
年代で見る 日本の地質と地形: 日本列島5億年の生い立ちや特徴がわかる年代で見る 日本の地質と地形: 日本列島5億年の生い立ちや特徴がわかる感想
美麗な写真と専門用語がふんだんに使われる解説。なんで地層に関する本は初心者向けを装って難しい本が多いんだろ。とはいえ、きれいな写真を見ていると専門用語が視覚で分かるようになるので、ある意味まともなスパルタ教育なのかも。久慈の琥珀や各地の柱状節理、大分県姫島のぬめぬめした黒曜石などはぜひ自分の目で確かめたい。いい苔スポットの名前があちこちで出てくるので、地層と苔の関係を見つめるのにも格好の一冊。もちろん苔に興味がない人もぜひ。
読了日:05月24日 著者:高木 秀雄
植木等伝「わかっちゃいるけど、やめられない!」植木等伝「わかっちゃいるけど、やめられない!」感想
わたしにとって植木等はクレイジーキャッツじゃなくて渋い役者というイメージ。小学生の頃からお経を読んで父親の代わりに檀家を回っていたという話は貧しさの象徴でありながら、その状況を想像すると笑える。子供が神妙に南無妙法蓮華経を唱えて年寄りたちがじっと聞き入っているなんて! コミックバンドを経て無責任男として花開くわけだが、実は仏教の教えをきちんと守り自らを律するところ弛まない人物だと知り、生前にもっと彼の姿を見ておけばよかったと後悔。Youtubeには当時の映像があるのでぜひセットで。
読了日:05月24日 著者:戸井 十月
ネネコさんの動物写真館 (新潮文庫)ネネコさんの動物写真館 (新潮文庫)感想
こんなに薄い本なのに14編も入っていて、それでいて世界がふんわりくっきりしている。単に動物と人との結びつきだけじゃなく、街ごと、世界ごとやさしさとほんのちょっぴりのさびしさとでくるんでしまう。ちょっと疲れたときに何度でも手に取りたい本だけど、続編はないのかな?
読了日:05月23日 著者:角野 栄子
船出(下) (岩波文庫)船出(下) (岩波文庫)感想
気むずかしさが先に立つ。男性陣はなぜか感情の大きさを比較したがり「君より僕の方が人間が好きだ!」とか叫んだりするので困る。そんなの言うのは勝手だけど審判がいないもの。丸く収まるかと思った頃にまさかの小町娘メソッドが発動して(゜Д゜) 後書きを読むとウルフを一通り読んだら分かるよというアドバイスがあったので、おとなしく他の有名な作品を読もうと思います……。
読了日:05月19日 著者:ヴァージニア・ウルフ
珠玉百歌仙 (講談社文芸文庫)珠玉百歌仙 (講談社文芸文庫)感想
塚本邦雄先生が選んでも江戸以降は俳諧色が強くて「歌仙」と言い切るのはつらい……。小侍従「夢とのみ思ひ果ててもやむべきに契りし文の何残りけむ」とか為家「落ちたぎつ岩瀬を越ゆる三河の枕をあらふあかつきの夢」のように新古今時代がやはり技巧・心ばえともにぐれているように思います。江戸に入るといろいろなものが進歩した結果、平安時代の鷹揚さや幻想性みたいなものが失われてしまったのかも。むしろ江戸に入ると天皇の歌に雅びがあっていい。「夕あらし雪の花をも負ひそへてかへる木樵りの歌う聲聲」
読了日:05月16日 著者:塚本 邦雄
船出(上) (岩波文庫)船出(上) (岩波文庫)感想
1915年のイギリスでは女性に参政権がないことに軽くショック。そういう状況を前提にした男性陣の物言いは当時では常識かもしれないけど21世紀には猿の遠吠えに見えてしまい、この100年で倫理観がいかに変わったか、そしてまだまだ変わっていないかを考えてしまう。同じ作家のダロウェイ夫人が出てきたことに驚き、夫が主人公レイチェルにちゅーするのも衝撃。作品の明確な方向性はないままレイチェルの思うがままに漂っていく不安定さはきらいじゃないけど、読書会では参加者のフェミ度が暴かれるような気もする。
読了日:05月15日 著者:ヴァージニア・ウルフ
地層の科学 (おもしろサイエンス)地層の科学 (おもしろサイエンス)感想
文章がひどい。誤字脱字、てにをはの誤りが最初から3頁続いたところで覚悟を決めた。文頭と文末で主語が変わっていたり、主語そのものがわからない文章もしばしば見られて意図がくみとれないことがあるため、わたしのような初心者には向かない。地層に関する本はすべて集めないと気が済まない人はどうぞ。
読了日:05月11日 著者:西川 有司
エコノミックス――マンガで読む経済の歴史エコノミックス――マンガで読む経済の歴史感想
経済はただ理念として存在するのではなく、歴史の中で多くの人が考え関わってきたという当然のことにこの本を読むまで気づけませんでした。わたしの場合、数字が絡むと人との関連性を忘れて数字単体で考えてしまう傾向がある。理念や思想の一つとして人の経済活動があり、様々な歴史の中で政治に利用されたりしながら今日まで続いているというのを改めて認識しました。歴史が好きで経済は苦手という人にはぜひおすすめ。
読了日:05月08日 著者:マイケル・グッドウィン
オルフェウスの窓 (第1巻) (Chuko★comics)オルフェウスの窓 (第1巻) (Chuko★comics)感想
飲み会で話が出たので久しぶりにひもといたらすごい吸引力。少女漫画鉄板設定であるところの「男の中に女が一人」が設定の細部にまで関わっていて、ミステリ感もあって頁がどんどん進みます。クラウス・ユリウス・イザークの三角関係を中心に進みますが、なんといってもイザークの妹フリデリーケのいじましさが胸に響きます。とっても分厚いですが一度は読むべき傑作です。
読了日:05月07日 著者:池田 理代子
禁酒宣言 (ちくま文庫)禁酒宣言 (ちくま文庫)感想
妻が若くして亡くなってから酒に溺れた私小説、というと背中を曲げて一人盃を傾ける印象がありますが、こちらはひたすら酒場通い。そして痛飲&泥酔。そんな日が続くといくら売れている小説家でも作品を書けず金が滞り、家族は着の身着のままというダメ人間ここに窮まれり。それでいて酒場では愛嬌よくママさんに絡んであまつさえ20歳以上年下の娘と同じくらいのママさんの肩に手を回したりする。同じ酒飲みとして反面教師筆頭となりました。きっかけとなる前日譚も気になります。
読了日:05月06日 著者:上林 暁
ハーバード白熱教室 世界の人たちと正義の話をしよう+東北大特別授業ハーバード白熱教室 世界の人たちと正義の話をしよう+東北大特別授業感想
憲法を変えようとする人たちが正義とされる時代に、政治・倫理を今一度考えるために読む。中国・韓国・インド・ブラジルの若者に同じ命題を与えても、考え方や場の盛り上がりなどにちがいがある。それでもどの国でも公平さを尊び、社会の不公平さを認識してもがいている。最後の福島での討議では、実際に進行している津波と避難について。むかし「究極の選択」という仮定の選択を求める流行があったが、このように命か使命かを判断することに思考すべきだと思った。これからも何が正しいのか迷う時にサンデル教授の教えを請うていきたい。
読了日:05月04日 著者:マイケル・サンデル,NHK白熱教室制作チーム

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