苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

Bryophytes Microscope

クラマゴケモドキだと思ったらツジベゴヘイゴケ(Tuzibeanthus chinensis)

投稿日:2017年5月6日 更新日:


地衣類や藻類は緑色でも苔ではない、というように苔の本の冒頭には苔の特徴と似ている植物がよく取り上げられる。苔について知るにはどうしても苔(蘚苔類)でないものを排除するのが先決です。そんな中で苔ではないの筆頭にあげられるのがシダ科のクラマゴケ。コケという名前がついているのにコケではないということで、苔愛好家の中では常識(?)。さらにまぎらわしいのが苔類には「クラマゴケモドキ」という名前の苔がいること。シダはクラマゴケ、苔はクラマゴケモドキって名付けが逆だよ! と思うけど、おそらく和名をつけられた順序としてシダの方が「苔に似ている」と先につけられた結果、蘚苔類研究者としては先につけられた「クラマゴケ」を尊重しなければならなかったのかも。

というわけで名前だけは知っているクラマゴケモドキですが、実際にはなかなか見つけられません。今回はいつも「クラマゴケモドキぽい」と思っている種が本当にクラマゴケモドキなのか調べてみることにしました。奥多摩でよく見かける苔類です。

クラマゴケモドキの仲間

不規則に分枝しながらも全体としてまとまっている感じがかっこいい。縮んでいたので霧を吹いたのもありますが、葉の表面にややつやがあります。葉はぎざぎざ(鋸歯)や毛状のものがありません。ここで本命の「クラマゴケモドキ」と「ヒメクラマゴケモドキ」の可能性はなくなりました。しかし、クラマゴケモドキの仲間は日本に15種類いますので、別の可能性も捨てきれません。

背側のアップ

平凡社の図鑑による分類表の最初に「葉にキールがあり」と書かれています。キールとはなんぞや。

キール keel 葉が二つに折り畳まれているときの折れ目。

「葉の折れ目」だと単語にならないからダメなのか……、横文字にされるとすぐに忘れてしまいます。上の写真には折れ目らしきものがないので、「キールはなし」と。

クラマゴケモドキ(?)の腹側

しっかりとした腹葉(舌型?)があり茎よりちょっと広いのがわかります。ここまで見てくるとヤマトクラマゴケモドキ(Porella japonica)が近いように思うのですが、決定的な問題が。葉(背片)の上半部に棘のような歯が1〜5あるというのです。もしかしてクラマゴケモドキの仲間ではない?

他に平凡社の図鑑で似ているのはツジベゴヘイゴケ。歯がない葉の丸さ(言いにくい)や石灰岩に生えること、細胞の油体が10個前後と条件はこちらの方が合いそう。

ツジベゴヘイゴケ(?)の油体

保育社の図鑑をひもとくと腹葉付近の感じが似ており、「野外での生態は一見クラマゴケモドキ属のもののように見え」とあるので、両者は似ているようです。なので、とりあえずツジベゴヘイゴケにしておきたいと思います。くはがたさう日記でアップしている写真にも似ていると思うのです。

それにしてもゴヘイって神事に使う「御幣」のことですよね。ツジベさんが見つけた御幣に似た苔、という意味なのでしょうか……。

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