顕微鏡を買ったのにあまり更新していない。苔はちょくちょく見に行っているのだけど、サンプルを調べる気持ちに一つハードルがある。最近分かってきたのは、顕微鏡があればすぐに形が分かるわけではないことで、まず土や埃を落とすのが大変。つぎに顕微鏡のピントは剃刀のように薄いので、ちょっとでも空間があると形が分からない。いざプレパラートに載せても、いまいち分かりづらい葉しかない場合もある。満足のいく顕微鏡撮影ができる可能性が低いというのが大きな理由かもしれません。経験値をあげて上手になればいいのですが、なんでもうまくなるまでの「やりたくないわけではないんだけど、やるのめんどくさいなー」という心境を乗り越えるのが大変です。
今日の苔類は樹幹についていました。木についている苔類はヤスデゴケの仲間が多く、お腹側に腹片や腹葉がついていて見分けるのが大変。しかしこれはどうもヤスデゴケではなさそう。
葉っぱが妙に波打っているのが見分けるポイントになりそうで、お腹側もかなり複雑に腹葉がある。
腹葉もごちゃごちゃしていて襟の有無までは見分けがつかないのだけど、枝の横から斜めに出ているので、「ヤスデゴケ型分枝」に近そう。ま、なんといっても特徴的なのは「葉は著しく波打」つところ。イチョウゴケの仲間も波打つけれども、そういうイチョウゴケには腹葉がないので却下。
ケビラゴケの仲間もかなりうねうねしているようですが、実物を見たことがほとんどないので比較しづらい。近いのはクビレケビラゴケあたりですが、無性芽をつけていないのでちがうか。無性芽の有無は季節によって異なると思うので、即断はできません。図鑑に時期的なことが書かれていると助かるのですが……。
細胞を見てみると、油体が多めでトリゴンは小さめ。
ケビラゴケの仲間は油体が少ないみたいで、その観点からするとケビラゴケの可能性は低いかも。もうちょっと探してみると、クラマゴケモドキ科に出会いました。クラマゴケモドキ属にも近い形のものがありますが、平凡社の図鑑(P.276)に掲載されているチヂミカヤゴケのイラストがかなり近いように思います。
詳しい特徴を追ってみると、
- 暗緑色:○
- 長さ3-5cm、背型は卵形、長さ1-2mm:サイズはかなり小さめだけど、すごく波波なので卵型といっていいのかどうか
- 著しく波打ち:○
- 腹片は雌株では舌形、雄片では三角形、ともに稀に袋状:いまいちわかりにくい写真しか撮れませんでした
- 腹葉は幅が茎径の約2倍で全縁:そう言われればそんな気も……
- 山地帯の樹幹に着生:○
- 分布は北海道から九州:○
- 油体は15-45個、小さい楕円体で均質:○
- 無性芽はない:○
○の数の方が多いから、これはチヂミカヤゴケということにしたいけれども、今ひとつすっきりとしないものが残るので、もう少し調査を続けます。苔のことなんてすっきり解決しないものですが……。
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