苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

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2017年3月に読んだ本はアンソニー・ドーアをはじめ良書揃い(某上下巻を除く)

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3月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3875
ナイス数:223

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)感想
天才理系少年と盲目の少女がラジオの音で結ばれる。ありきたりだと笑わば笑え。読了後はあまりにショックで午前中の仕事に手が着かないほどで、オバマ大統領が愛読するというのも納得。この美しさは人々が立場は違えど懸命に戦争をかいくぐった証で、生き延びる人もいれば(女性が多い)そうでない人もいる。これを読んだ後に銃剣道なんて話を聞くと腸が煮えくりかえる思いにかられます。戦争は生産性を奪い将来を奪い幸福を奪う。こんな単純なことが分からない人は本書を読むべきだし、分かっている人にも損はさせない、人類必読書の一冊です。
読了日:03月31日 著者:アンソニー ドーア
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 下巻 (新潮文庫 む 5-5)世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 下巻 (新潮文庫 む 5-5)感想
ダゴンが出てきてこんにちは。ついにEDが完治したことをまずは祝福したい。そしてMicrosoft他プログラマーたちが、人間を使わずに暗号化と復号化を成し遂げられるようになったことを心から感謝する。さもなければ人は暗号化をするためだけに26人も人間を殺さなくてはいけなかった。ページをくる速度はとても速いし音楽ネタは楽しみなのだけど、やっぱり全体としていけすかない主人公の頑なな思想には最後までなじめなかった。音楽やブランドを消費することで箔が付く傾向はここから始まったのだろうか?
読了日:03月26日 著者:村上 春樹
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)感想
高校時代に分からないまま読み切って以来の再読。当時の教養では分からないのも仕方ない。今ならボブ・ディランもデューク・エリントンも一通り聴いて音楽性や彼らの生きた時代なんかも頭では分かる。ハードボイルドというよりもちょっとしたヒーローものにありがちな万能さが鼻につくかどうかが、Haruki Murakamiの読者になれる試金石なのかもしれない。「やれやれ」が出るとキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!という五月の霞がない青空のような気持ちになる。
読了日:03月26日 著者:村上 春樹
カラフル (文春文庫)カラフル (文春文庫)
読了日:03月21日 著者:森 絵都
草の辞典 野の花・道の草草の辞典 野の花・道の草感想
表紙に一目惚れ。半透明な表紙に草花が描かれて、さらに本自体にも別の草花が描かれて小さな草原のよう。調べたら雷鳥社は杉並区で歴史ある出版社だと知り、神田村以外からすてきな本を出されるとわけもなくうれしい。淡いけれども特徴をきちんと捉えた写真、簡素にして十分な解説で、わたしのような草花を一から覚えようとする者に負担にならない情報量で、文庫サイズは運びやすいししまいやすい。一家に一冊植物の本を、とおすすめできます。
読了日:03月20日 著者:森乃おと
新撰 小倉百人一首 (講談社文芸文庫)新撰 小倉百人一首 (講談社文芸文庫)感想
定家の百人一首なんて「無味淡泊、平懐単調」とうっちゃって、式子内親王と定家、あと2・3人を除けば他は一切凡作と滅多切り。1人ずつ格調高い旧仮名遣いで表に出ない名歌をうたいあげ、百人一首の話題になるとどーんと地面にたたきつけるギャップが堪らない。「窈窕たる美」「榮耀に春を惜しむ」「丈高くうるはしい歌」褒め言葉に困ったら本書を気儘に開くと、絢爛豪華な言葉の美酒に酔いしれること疑いなし。意外とは失礼かもしれないが歌の解釈も丁寧で、古語に慣れ親しんでいなくても案外分かりやすい。『ちはやふる」の後にぜひ。
読了日:03月19日 著者:塚本 邦雄
樹の中の鬼―対談集 (1983年)樹の中の鬼―対談集 (1983年)感想
『苦界浄土』では表に出ない作者の生の声が聞こえる。公害と被害者という視点ばかりが取り上げられるが、そも人はどのように暮らし喜び悲しんできたか、その世界はまだ残っているのだから今のうちに残しておかなければという焦燥が伝わってくる。福島の問題は水俣・足尾から続く人の奢りが招いた人災であり、すべて現在は過去からの地続きで今の視座から徒手空拳で臨まずに「生民」の声を聞くべき。ところで対談相手が全員男性なのはどんな意図? 今は藤原書店の全集に細切れで入ってるはずなので、ぜひ一部だけでも。
読了日:03月19日 著者:石牟礼 道子
東京駅殺人事件 (光文社文庫)東京駅殺人事件 (光文社文庫)感想
1980年だからまだ国鉄だし、トリックもかなり緩い。ラストの少女誘拐などたいした仕掛けでもないけど、その緩さがかえっていい。凝ってぎゅうぎゅうに情報が詰め込まれているよりも、有名な十津川警部を筆頭に多くの人が事件解決に奔走する様は「他の仕事放り出していいんですか?」と心配になるほどだが、それ故に必死さが伝わってくる。だてに30年以上読み継がれているわけではない小説でした。
読了日:03月14日 著者:西村 京太郎西村 京太郎
愉楽愉楽感想
身体障害者でも一芸に秀でていれば金が稼げる、そんなふうに思っていたことがありました、という村の話。中心人物の裏目を引くスキルが高すぎて悲しくなるのだけど、文革当時は正しい信念よりも、博奕を打ち続けるような変わり身の早さが求められたのかもしれない。ラテンアメリカ文学から始まったマジック・リアリズムの流れが中国に息づいているのは政治体制の問題がつきまとうからか。『炸裂志』読書会に合わせて読んだのだけど、文体は勢いがつきすぎていて両書ともにおもしろいけど疲れるのも事実。
読了日:03月12日 著者:閻 連科
百珠百華―葛原妙子の宇宙百珠百華―葛原妙子の宇宙感想
現代短歌が苦手なので躊躇したけど塚本邦雄の解説があれば乗りきれるかもと思って手に取る。現代短歌の苦手なところは極端な破調と観察できないほどのイメージ飛躍。見知らぬ森に迷いこんで右も左も分からないところを、やはりイメージが飛躍しがちなガイドが解説してくれるので、ずっと雲の上を漂うような読書となる。「とり落さば火焰とならむてのひらのひとつ柘榴の重みにし耐ふ」の魔術的表現が好き。
読了日:03月11日 著者:塚本 邦雄
コケの生物学 (のぎへんのほん)コケの生物学 (のぎへんのほん)感想
数ある苔関連書籍の中でも一番難しい。タイトル通り植物学の視点から苔を読み解き、古今東西の文献をひもときながら苔の生態を探る。苔は維管束がないから大きくなれないというのは嘘だとか、蘚類の胞子は長期間生きていられるのに苔類の胞子は早いと1時間足らずで死んでしまうとか、普通の苔関連書には載っていない話ばかり。蘚類のホンモンジゴケが銅葺きの寺院によくいる理由として、胞子を出さずに無性芽で増えるため、人の履き物について移動しているのではないかという説がとてもおもしろい。難しいけれど一読に値する。
読了日:03月02日 著者:北川 尚史

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