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第49回読書会 閻連科『炸裂志』

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中国人作家を取り上げるのは初めての試み。当日までに課題図書と話題になった『愉楽』を読んでおけばいいかなとのんびりしていたら、訳者の泉様から連絡がありご参加いただけることになりびっくり。とても気さくな方で、後書きだけでは知ることのできないエピソードをたくさん披露していただきました。Webなど書評で読んで断片的だった情報が目の前にいる人につなげて語っていただくことで、関心事が集約されていく経験ができました。

参加者の読後感想は以下の通り。

  • 文化大革命後の今日まで続く共産主義と経済発展が中心
  • 四兄弟の特徴は中国の現状を象徴する(学問・政治・経済・良心)
  • 男対女の対決が全面に出てトラディショナルな印象
  • アメリカ人を喜ばせるためにベトナム村を作るところがよかった
  • 作中の色彩がカラフル
  • 『愉楽』よりも『炸裂志』の方がおもしろいという方多数
  • 閻連科はフォークナー、莫言、マルケスのように同じ舞台設定を使い回すことで関連性を持たせる
  • 家の体面など人々の動機が中国らしく感じる
  • 事件を重ねてたたみかけてくるが、日本の作家(例:大江健三郎)のように重々しくない
  • 女郎で男性を誘惑する話が中心なのに、性的な描写は淡泊(これは別の作品で政治的な話と絡めた時に発禁処分されたことも影響しているようです)
  • 政治的な話ばかりであることや人物の内面があまり出てこないのは、中国古来の歴史書の形式をとっているからでは?
  • 「志」は歴史書という意味なので名前が諸葛亮孔明ぽい意味が理解できなかった。別に義兄弟出てこないし、兄弟は出てくるけど全部で4人だし関羽や張飛ぽいわけでもない

訳者は実際に作者と話し、翻訳に際しての作中の意図などを教えてもらっていたとのことで、日本にいる日本人がただ読むよりもずっと多くのことを聴くことができました。作者が谷川俊太郎とも交流があるとか、発禁処分にされた経緯などはとても興味深い。また、大陸版と台湾・香港版、さらには作者から届いたプルーフそれぞれに内容が異なったりもするそうで、日本だとちょっと考えられない話です(北海道と東京と九州で内容がちがう村上春樹なんてありえないですよね)。本の成り立ち自体が日本と中国では異なり、未だに発禁処分が絶えない国で文章を書くことについても思いを馳せることになりました。普段は訳者や研究者が参加することはないので、とても刺激的でいつもより勉強になる、読書会らしい読書会だったかも。

関連する記事をいくつか。
改革開放の「真実」はどこにあるのか――閻連科『炸裂志』を読む
[第15回] 好奇心を刺激するセレブたちのゴシップ
中国の著名作家、村上春樹を絶賛「超越した尊敬の念」:「現在の中国では、どんなことも起こり得る!」とは本作をものした著者ならでは。

次回は6月10日(土)、課題図書は現在Twitterで投票を受付中です。

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