苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

Bryophytes

植物なのに動物ぽいイタチゴケ(Leucodon sapporensis)

投稿日:2017年3月15日 更新日:


蘚類と苔類では圧倒的に苔類が好きなのは、苔類は見分けがつきやすいから。蘚類はきれいなんだけど、とにかく見分けがつかない。茎がしっかりしていてとがった葉のタイプばかりで、微妙な葉の大きさや細胞の形の違いなどで見分けるものも多く、肉眼やルーペだけでは勝負がつかない。苔類だって大方肉眼だけでは話にならないのだけど、蘚類の方が特徴をつかみづらい。このあたりは個人差が大きくて蘚類の方がわかりやすいという人もいるし、むしろそちらの方が多数派みたいですが、わたしはちがうのです。チョウチンゴケやコウヤノマンネングサのように比較的わかりやすい種もあるけれど、その他大勢を含めた全体で見ると蘚類の方がわかりにくいと思う。蘚類のハイゴケ属なんて、一時期よくわからない苔のたまり場にされてしまったとかで、現在遺伝子解析などでさらなる分類を進めているらしい。基礎研究だけど分類は大変だしいずれ役に立つのだから、国はきちんとお金を出してほしい。

↑すごく欲しい本

苔の中には動物の名前がつけられたものもある。哺乳類だとリスゴケ、ネズミノオゴケ、イクビゴケ(猪の首)、は虫類だとジャゴケ、ヘビゴケ(ジャゴケとは別もの!)、虫からはヤスデゴケ、カゲロウゴケなどなど。特に哺乳類の名前がついているものは蘚類が多い気がする。ふさふさしたしっぽがモチーフなのかもしれないけど、苔と動物ってあんまり共通するイメージが持てないのでちょっと不思議な感じ。名付けって難しい。

東京でもっとも人気の山の近くで見つけたイタチゴケと思しき苔。川沿いの樹幹にたくさんついていました。茎に葉っぱが密集して、イタチのしっぽのように細長くなることからつけられた模様。イタチぽいしっぽの動物っていっぱいいそうだけど……。リスゴケという苔もイタチゴケに似ているらしい。とはいえ、こちらによるとリスゴケよりもイタチゴケの方が全体に長いようです。

樹幹につくイタチゴケ

イタチゴケの葉の特徴は縦皺。肉眼ではまずわからず、ルーペでかろうじて見えるか。顕微鏡はほんのわずかな皺でも如実にぼけるので、左右に1つずつ入っているのがはっきり分かります。が、撮影したはずの縦皺写真が行方不明。苔の写真は似ているので、いつ何を撮ったかをテキストで記録に残しておかないと分からなくなってしまいます。

しっぽぽいイタチゴケ

残念ながら蒴はまだ帽(蓋状の部分)がとれていません。イタチゴケは国内に12種類もいるそうで、胞子体の蒴歯で見分ける部分が多いそうです。メジャーなのはイタチゴケとトガリイタチゴケで、ちがいは細胞膜の厚さらしいので、薄めの細胞膜からしておそらくトガリイタチゴケなどではなく、イタチゴケそのものかと思っています。

中肋は先端まであり、透明尖も出ている

蘚類の難しさは蒴の形や歯のちがいで判別するところにもあり、蒴が出ている時期でないと見分けがつかないということになります。蒴もまた順当に春に出るタイプと、秋に出るタイプ、さらにはある場所では蒴があるけれど別の場所ではなかったりするものもいて、いったいどうしたらいいんだ……! 苔観察に行くたび思うのが、携帯型遺伝子解析装置があれば、と。特定(植物界では「同定」と言います)するために偶然に頼る部分が多すぎると思います。そろそろ目視以外の同定方法があってもいいのでは。なお、イタチゴケは図鑑でも「同定は難しい」とあるので、参考程度にお願いいたします。

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